スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
40歳で異例の最高峰スペイン1部初挑戦… フットサルのレジェンド森岡薫は今、何を?<独占インタビュー>
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byDaisuke Nakashima
posted2021/05/09 17:00
40代にしてスペイン挑戦を決めたフットサル界のレジェンド森岡薫に話を聞いた
試合は最終的に5-6で競り負けたが、4-4の場面で放ったシュートは惜しくもポストを直撃。終了間際には森岡のシュートが味方に当たってゴールネットを揺らし、世界的強豪を相手にデビュー戦で1アシストを記録した。
「本当に来てよかったと思う」
「本当に来て良かったと思ったし、やっぱりこの雰囲気は日本では絶対に味わえないとすごく感じた。スペインのチームとは代表で練習試合をしたことはあるけど、公式戦の激しさは全然違った」
確かな手応えを掴んだデビュー戦を皮切りに、森岡はスムーズにチームにフィットしていった。
初ゴールを記録したのはデビューから4戦目のジンベー・カルタヘナ戦。2-2で迎えたゲーム終盤の37分、スペイン代表アドリの鋭い縦パスをダイレクトで押し込み、3-2とする決勝点を決めた。
「何回見ても気持ちいいシーン」と振り返るゴールの直後には、思わず胸のエムブレムにキスをしていた。
「40歳の選手を世界最高峰のリーグに受け入れるなんて、チームからしてみればイチかバチかじゃないですか。サッカーの世界じゃありえない。それをしてくれたこのチームには感謝してもしきれない部分があったから、勢い余ってそういう喜び方をしました」
さらに6日後のガリシアカップでは2ゴールを記録。続くリーグ戦では初めてファーストセットに入った。
「もっと早い時期に来れば……」
スペインの生活やチームの戦い方に慣れはじめるのと並行し、順調にコンディションも上がっている。十分にやれるじゃないか。芽生えた自信が次第に深まっていくのを感じていた。
「もっと早い時期に来ればよかったなと思いましたね。40歳でもやれるのに、20代や30代前半で来ていれば、また新たな経験ができたんじゃないかという後悔はありました」
しかし、まさにこれからという時に不測の事態が生じる。パンデミックの拡大によるリーグ中断である。