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28年間の歴史で1人もいない… プレミアで初めて頂点に立つイングランド人監督は誰だ?
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/05/03 06:01
プレミアリーグ初の優勝を成し遂げるイングランド人監督は誰だ?
独自のアイデアを持つイングランド人監督が増えつつある
とはいえ、ほんの少しずつながら潮目が変わろうとしている。
「信じられないようなアイデアマンだ」
ビエルサは、ブライトンのポッターを絶賛していた。絶望的なタレント不足が災いしてチームは下位に低迷しているが、試合相手、試合展開に応じた陣形変化は特筆ものであり、いずれはより大きなクラブを率いるに相応しいとの評価を高めつつある。
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クリス・ワイルダーは、センターバックのオーバーラップというオリジナルアイデアで戦術愛好家を喜ばせた。今シーズンは肝となるジャック・オコンネルが膝の手術で使えず、補強をめぐる意見の相違で3月にシェフィールド・Uを追われたとはいえ、綿密な分析に基づく大胆な戦略の考案者として定評がある。来シーズンの現場復帰は濃厚だ。
さらに、キック・アンド・ラッシュとセットプレー以外には手がなかったアラダイスが変わった。カラム・ロビンソン、マテウス・ペレイラ、コナー・ギャラガーなどスピード、テクニックに優れた選手を軸とするパスフットボールにモデルチェンジしようとしている。
近頃のウェストブロムウィッチは、「これがアラダイスのチームか?」と新鮮な驚きに身震いするほど魅力的だ。残念ながら今季はプレミアリーグに残れそうもないが、現在のスタイルを維持できれば、1シーズンで戻ってくるに違いない。
もちろん、結果を欲する各クラブのオーナーは今後も著名な外国人監督の招聘を第一に考えるかもしれない。ただし、独自のアイデアを持つイングランド人監督が増えつつあることを、プレミアリーグ全体が認識しなくてはならない。
歴史を変えるのはジェラードか、ランパードか、テリーか
前々回のコラムで報じたセントジョージズ・パークも、指導者の育成に尽力している。名監督誕生の機運は徐々に高まりつつあり、18-19シーズンからレンジャーズ(スコットランド)を率いるスティーブン・ジェラードは、その先駆者になっても不思議ではない。
素早いパスワークとウイングの推進力を活かしたアタッキング・フットボールにより、ぶっちぎりで今シーズンのスコットランド・リーグを制した。
かつてリバプールのアイコンだったジェラードが、いよいよ監督としてプレミアリーグにステップアップする日が近づいてきた。
プレミアリーグ発足から28年間、イングランド人監督が優勝したケースは一度もない。
しかし、歴史には必ず転換期が訪れる。ジェラードか、一度野に下ったランパードか、あるいは現在アストンビラでコーチを務めるジョン・テリーなのか。
イングランド人の監督がプレミアリーグの優勝トロフィーを、チャンピオンズリーグのビッグイヤーを掲げたとき、フットボールの母国はこのうえない幸福感に満たされる。