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浅田真央、3年間のサンクスツアーでの変化…ライター松原孝臣が見た選手時代とは異なる“感情と感覚”とは
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2021/05/02 11:03
4月26日、横浜アリーナで演技を披露する浅田真央。千秋楽初日の公演後にオンライン取材に応じた
「選手を引退してから、試合のときのような緊張感、達成感はもう味わえないかなと思っていましたけど、サンクスツアーを通じて緊張感、やりがいを感じていて。選手のときには感じられなかったスケートへの愛が強くなりました。心から愛することができたし、楽しく滑ることができました」
サンクスツアーでは、スケーターとして滑るだけでなく、演出も手がけた。自身のプログラムもアレンジし、他のメンバーを束ねる役も担った。
当初は不安もあった。でもいつしか、不安はかき消えていった。
「初めて、すべてのものを作り上げるということをしています。やはり不安もありましたが、ショーが少しずつできあがってきて、楽しみな感情が出てきています。また、今までにない滑りをお見せするので、これはほんとうに新たな挑戦だなと思っています」
競技とは違うスケートに芽生えた感情
何よりも競技に励んでいた頃と違う感覚を覚えた。
試合では常に自分との闘いだった。「自分に負けないように」と言い聞かせ、更なる高みにたどり着くためにエネルギーを傾け、努力を惜しまなかった。一方で引退後のサンクスツアーを続ける中で感じたことがあった。著書『浅田真央 100の言葉』(扶桑社)では現役時代をこう振り返っている。
「今思えば、あまり感情がありませんでした。ロボットみたいに黙々と練習して、トレーニングして、という生活だったように思います」
引退後、氷の外でさまざまな経験を積み、人と出会い、サンクスツアーで仲間を得た。公演を創り上げていく中で湧き起こる感情があった。
「あたたかい会場で滑ることができて、感情というものが出るようになりました。氷で冷えたリンクがあたたかく感じられるんです」