サンクスツアーでは選手生活で使用していた曲で滑っている。同じ曲でも異なる感覚にあったから、「選手の頃とは違う滑りができているんじゃないか」と感じられた。

　スケートに対して発見があり、それはよりスケートの魅力を感じさせてくれるものだった。サンクスツアーがここまでの成功をおさめた理由であった。

スケートからもらった「幸せ」

　4月26日、千秋楽公演初日を終えての浅田の言葉もそれを物語っている。

「ほんとうに、選手のときには感じられなかった幸せを感じています。多くの方々に来ていただく中で滑ることができたからです」

「選手のときはスケートだけをしていましたけど、いろいろな経験をしたり、いろいろなことができたので、選手のときより充実していた3年間で、あっという間に終わってしまいました。（充実を感じたのは）1人じゃないんだなというのをすごく感じていて。メンバーがいてくれて、スタッフの方がサポートしてくれて、お客さんが来てくださって、みんなで作りあげています」

　現役時代は長年にわたり、自身の成長を信じ、そのための努力を惜しまず、世界のトップスケーターの1人として、なお高みを目指した。その過程の末に、たどり着くことができた地平があった。

　競技人生のときと同様に、「挑戦」という言葉も交えつつ抱負を語ってから3年。千秋楽公演の初日が終わり、最後の日を前に浅田は言った。

「引退してからずっとスケートを続けてきて、すぐにサンクスツアーが始まってずっと滑り続けていますけど、明日、自分の力がなくなるまで滑りきって、その後に自分がどうしたいのか、休む時間も作りつつ、前に進んで行けたらと思っています。何かしらの形で、スケートに携わっていけたらいいなと思います」