「昨年から痛みなく動けているのですが、その前の年とかは結構しんどい状況でしたね。ただトレーニングを教えてもらって、コンディションが良くなると深い痛みはなくなりました。当然、制限をかけなくていいので、今はいい状態で動けていますね」

　腰の不安がなくなった昨季は守備においてもいいチャージを見せ、バッティングでは左ピッチャーに強さを発揮した。そして今季は出番こそ多くないが、課題の右ピッチャーへの対策、低めのボールへの見極め、さらに持ち味であるショートの頭を越える逆方向へのバッティングだけでなくセンターからライト方向への強い打球も目立っている。試合前、倉本のバッティング練習を見学しているとスタンスや、トップの位置など微調整を繰り返している姿がよく見られる。

「ああ、よく見ていますね。去年の延長線上で、いろいろと探っている部分はあります。バッターボックスに立ってみて、なにか感じたら変えるなど、根本的な部分は崩さずプラスアルファしていく感じですね。自分としてはまだまだこれからだって感じなんですよ」

適時打を放つ倉本寿彦　©JIJI PRESS

「妹に喜んでもらえるような活躍をしないと」

　晴れやかな明るい表情。球界ではベテランと言われる年代に差し掛かろうとしているが、依然としてモチベーションは高いようだ。

「技術もまだまだ伸びている実感がありますし、しっかりトレーニングして頑張っていきたいですよね」

　野球に向き合う気持ちは若いときとなんら変わりはないが、ただこの数年、冒頭に記した後援会のこともしかり、取り巻く人たちの想いを強く感じるようになった。とくにコロナ禍といった特殊な社会状況、一番頼りになるのは身近な家族であり、妹の美穂さんは年頭の自主トレの際、毎日のように球場を訪れサポートしてくれた。

「本当にありがたかったですね。妹に喜んでもらえるような活躍をしないと」

【次ページ】　野球をプレーできる喜びを感じながら