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エフフォーリアのダービーは「不安がないわけではありません。でも…」(鹿戸師) “体質が弱かった”馬が“無敗皐月賞馬”になるまで
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2021/04/21 06:00
エフフォーリアは皐月賞で危なげないレース運びを見せ、無敗のままクラシック第一戦を制した
直線に向くや、すぐに前が開き……
本馬場へ送り込むまで愛馬に付き添った。馬場入り後はコース脇で返し馬を見守ると、調教師スタンドへ移動してレースを見届ける事にした。
「返し馬はリラックスして出来ているように見えました。ゲートが開くと、いつも通りの好スタートを決め、スッと好位置におさまってくれました」
3~4番手という位置取りに関しては大方予想していた通りだったと言う。
「GIにしては落ち着いた流れになったけど、折り合いに不安がない馬なのでうまく流れに乗れていました。終始インにいたけど、脚さえたまっていればいつでも出て来られると思ったので、とくに心配にはなりませんでした」
実際、直線に向くや、すぐに前が開き、何の不利もなくスムーズに先頭に躍り出た。
「先頭に立ってからは安心して見ていられました」
早目先頭から粘り込みをはかるタイトルホルダーとの差は少しずつ開き、ゴールの時には3馬身差をつけていた。「1戦ごとに力をつけている」と言う指揮官の言葉を証明するように、デビュー戦以来、使われるたびに2着との差を広げての4連勝。体質の弱かったエフフォーリアは、ついに無敗のクラシックホースへと昇華してみせた。
「改めてクラシックを勝つのは大変だと感じていた」
これが開業年の08年にスクリーンヒーローで制したジャパンC以来のGI勝利となった鹿戸。自身2度目のGI制覇を成し遂げた4月18日は、そのスクリーンヒーローの誕生日だった。
「スクリーンヒーローの誕生日というのは後から聞き、そんな事もあるんだと驚きました。嬉しさはジャパンCも今回も同じです。ただ、クラシックを勝てたというのは大きいですね」
牡牝ともクラシックレースには過去に何度か挑戦していた。
開業した直後にはエフティマイアで桜花賞とオークスに挑み、いずれも2着に善戦した。その後も不思議と牝馬との縁があり、09年にはデリキットピースでオークス(6着)、11年にはスピードリッパーが桜花賞(10着)、オークス(5着)、12年にはダイワズームがオークス(6着)、14年にはフォーエバーモアで桜花賞(8着)とオークス(11着)にそれぞれ挑んだ。また、16年にはダイワドレッサーとビッシュの2頭をオークスに送り込んだがいずれも先頭でゴールを通過する事はなかった(それぞれ8着と3着)。
そして昨年、初めて牡馬をクラシック戦線に出走させた。ウインカーネリアンで皐月賞(4着)とダービー(17着)に挑戦したのだ。
「入って来た馬は基本的にクラシック戦線を目指しています。でも、出走させるだけでもなかなか容易な事ではありません。勝つとなると尚更並大抵の事ではありません。今年も桜花賞にジネストラを出走させたけど11着に敗れ、改めてクラシックを勝つのは大変だと感じていたところです」