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ビエルサの愛弟子が語るオシムとの違い 「人もボールも動く」サッカーは同じでも指導法が“真逆”なワケ 

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赤石晋一郎

赤石晋一郎Shinichiro Akaishi

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photograph byGetty Images(L),BUNGEISHUNJU(R)

posted2021/04/18 06:00

ビエルサの愛弟子が語るオシムとの違い 「人もボールも動く」サッカーは同じでも指導法が“真逆”なワケ<Number Web> photograph by Getty Images(L),BUNGEISHUNJU(R)

共通点も多々あるビエルサ(左)とオシム

 ビエルサもバルセロナ監督就任などメガクラブからのオファーの噂が絶えないものの、実際に指揮を執ったのはスペインのアスレティック・ビルバオやフランスのマルセイユなどの中堅やビッグクラブ未満とされるチーム。そして2018年には凋落したヨークシャーの古豪、イングランド2部チーム(当時)だったリーズの監督に就任している。今季、ビエルサは古豪リーズをプレミアリーグ昇格に導き、センセーショナルなサッカーを展開しイギリスメディアを熱狂させているのは当連載でも紹介した通りだ。

 オシムは「人もボールも動く」魅力的なサッカーを展開し、彼の指導のもと佐藤勇人、水本裕貴、阿部勇樹、巻誠一郎、山岸智、羽生直剛ら多くの日本代表選手がジェフから誕生した。オシム自身も後に日本代表監督に招聘されることになるのは周知の通りである。

ビエルサは「日本に対して大きなリスペクトを持っている」

 ビエルサのもとで才能が開花したMFカルバン・フィリップスはイングランド代表のレギュラー格としてプレイするまでになり、FWパトリック・バムフォードやSBのルーク・エイリングも代表候補に名前が上がるまでの成長を遂げた。いずれも才能はあるが2部リーグ止まりではないかと見られていた選手たちで、ビエルサの指導法がいかに卓越したものであるかを示しているといえる。

 本稿で2人の名将をテーマとしたのは、オシムが日本サッカーを変えたように、ビエルサもまた日本サッカーを大きく変えるような影響を与えうる指導者となるはずだ、という思いからだった。実際に彼の戦術を学びたいと考える日本人指導者も多い。

「マルセロも日本という国に対して大きなリスペクトを持っています。勤勉で労を厭わないという日本サッカーの特性と、マルセロのプレイスタイルはとても相性が良いのではないかと私は思っています」(荒川)

 これまで「マルセロ・ビエルサ」の名前は日本代表監督候補、Jクラブ監督候補として何度もスポーツ新聞やメディアを賑わせてきた。その真相にも知られざる物語があるのだが、それは別の機会に記したい。いずれにしても日本サッカー協会が代表監督就任を渇望して止まない外国人指導者の1人がビエルサであることは間違いないだろう。そして日本サッカーをワンランク上のステージに導く知識と経験を持つ人物がビエルサだとも、言えるだろう。

 ヨークシャーの空から日本へ。はたして“エル・ロコ”が日本サッカーと邂逅する日は訪れるのだろうか――。

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荒川友康(あらかわ・ゆうこう)

サッカー指導者。アルゼンチンで複数のチームや滝川第二高校での指導を経て、ジェフ千葉・育成コーチ、京都サンガ・トップチームコーチ、FC町田ゼルビアトップチームコーチなどを歴任。ビエルサのみならず、Jリーグでもアルディレスなどの名将の元で働く。アルゼンチンサッカー協会認定のS級ライセンスを所持。FCトレーロス所属。

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