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なぜ長谷部誠や鎌田大地がドイツでイキイキしているか… “再生工場”フランクフルト敏腕取締役の巧みな補強術
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/04/09 17:01
フランクフルトを支えるボビッチ取締役
引き出しの奥底で眠っている選手を探している
才能を高く評価されながら、なかなか実力を発揮できず、他クラブで一度ないし何度かうまくいかずに「失格」の烙印を押された選手たちに着目したのだ。
「我々はポテンシャルを秘めた選手、引き出しの奥底で眠っている選手を探しているんだ。誰もが注目するような大きな引き出しを開けたりはしない。クラブとしての将来像を作り上げるためにも、そうした選手を獲得し、クラブで成長を促して、数年後に高値で売れるサイクルを作り出さなければならない」(ボビッチ)
選手を成長に導くためには、正しいプランとそれを実践できる指揮官が必要不可欠だ。そうした意味で前任者のニコ・コバチ監督、そして現在のアドルフ・ヒュッター監督は、ともに殻を破れない選手のポテンシャルを信じ、辛抱強く支え、その才能を引き出す力に長けている。そこには、同じ哲学がある。
クラブ全体が「再生工場」として機能している
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クラブ全体が「再生工場」として機能していると言えるかもしれない。
例えば、フィリップ・コスティッチはハンブルガーSVでは思うようなプレーができずにブーイングを浴びることが多かったが、現在の躍動感は群を抜いている。
ルカ・ヨビッチは2017年にベンフィカからレンタル移籍で加入。その費用は、わずか20万ユーロだった。2200万ユーロで正式獲得に至ったが、2年後にR・マドリーへ移籍した際は6300万ユーロとなっていた。
今季加入のアミン・ユネスはナポリでベンチ生活を送っていた。レンタル費用は100万ユーロだが、公式戦21試合で4得点をマークし、ドイツ代表に復帰している。ボビッチがチームに来て以降、フランクフルトの選手市場総額は約3倍に跳ね上がったという。
2016年は総額7200万ユーロだったが、現在は総額2億400万ユーロだ。
もちろん、獲得した選手のみんながみんな、すぐに期待通りの活躍をするわけではない。そうした際はレンタル移籍をうまく利用する。鎌田は、まさに最大級の成功例だ。
移籍初年度は出場機会がほとんどなかったが、ベルギーリーグのシント・トロイデンでゴールを量産。フランクフルトへ復帰後はヒュッター監督の信頼を勝ち取り、今やチーム躍進に欠かせない選手にまで成長している。
「レンタル移籍で経験を積ませれば、こうした成果が見られるとイメージしていたのか」という記者の質問に対して、ボビッチ取締役は次のように答えている。