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なぜ長谷部誠や鎌田大地がドイツでイキイキしているか… “再生工場”フランクフルト敏腕取締役の巧みな補強術
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/04/09 17:01
フランクフルトを支えるボビッチ取締役
「うちではプレー時間が少なく成長機会を得られないので、外国や他クラブへレンタルで出して、その機会を作ってもらい、成長して帰ってきてもらう。そう考えていなかったら、そもそも移籍の段階で売却しているよ(笑)」
その選手にどのような環境が必要で、どのような成長段階が大切で、そのためにできることを考える。言葉にすれば当たり前のことかもしれないが、それを正しく遂行することの難しさは、僕らにもよくわかる。
選手スカウティングでは『SAP』を活用
フランクフルトは、どのように選手をスカウティングしているのだろうか。
まず、ドイツ『SAP』社が開発したソフトウェアを使用したデータバンクを持っている。世界中のあらゆる逸材のデータが詰まっており、常に更新されているという。ブルーノ・ヒュブナーSDは「世界中のどんなタレントもチェックすることができるプログラムだ」と話していた。
もちろん、移籍時期に限っての対応ではなく、来るべきときに備えて常日頃から準備しているところも注目だ。ヨビッチに関しては16歳の頃からチェックリストに名前が入っており、ユヌスは「3年前から獲得を画策していた。今回はそのタイミングが来たということだ」とヒュブナーが明かしている。
また、ボビッチには自身のキャリアで築き上げてきた優れたネットワークがある。R・マドリーのスポーツディレクターとは関係良好。シュツットガルト時代のチームメイトであるバラコフからは、ブルガリア選手の情報を逐一もらっているという。そのうえ中国、日本、アメリカ、南米にも密なネットワークがある。まさにワールドワイドだ。
「シーズン前に市場を調べるんだ。どこに移籍金0の選手がいるのか。チームにはどんなタイプの選手が足らないのか。分析して終わりではなく、スカウトして、ネットワークに情報を飛ばす。監督には監督ならではのアイディアもある。それぞれのネットワークからこれはと思う選手を出し合い、チームにとって本当に必要な選手にアプローチするという流れで行っている」(ヒュブナー)
そんなフランクフルトにとって気がかりなのは、今季終了後にそのボビッチがヘルタ・ベルリンの新しいプロジェクトに参加するためクラブを去ることが予想されていることだ。ヒュブナーSDも契約満了で辞めることが決まっている。
さらに、ヒュッター監督にはボルシアMG移籍の噂も出てきている。これまで重要な役割を担っていた人材が抜け、そこから一気に崩れることも予想される。