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なぜ長谷部誠や鎌田大地がドイツでイキイキしているか… “再生工場”フランクフルト敏腕取締役の巧みな補強術
posted2021/04/09 17:01
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
長谷部誠と鎌田大地が所属するアイントラハト・フランクフルトは、27試合を消化した今季ブンデスリーガで4位と好位置につけている。前節5位ドルトムントとの直接対決を制したことにより、上位4クラブに与えられる欧州チャンピオンズリーグの出場権獲得がかなり現実味を帯びてきた。
2018年にはドイツカップでバイエルンを下して優勝し、翌19年はヨーロッパリーグで準決勝に進出するなど、ここ最近のフランクフルトの躍進は目覚ましい。しかし、ほんの5年前には2部降格ギリギリまで落ち込んだこともある。
当時1部16位でシーズンを終えたフランクフルトは、2部3位ニュルンベルクとの入れ替え戦に臨んで、2試合合計2-1でなんとか残留を果たすことができた。多くの関係者はほっとしたことだろう。だが、そこでクラブの立ち位置を見誤ってしまうと、それ以降の舵取りはうまくいかない。
大きかったボビッチの代表取締役就任
自分たちは何ができて、何が足りなくて、今後どこを目指すのか――。現実を直視せず、自らを過大評価することで転落していくクラブも少なくない。
そんななかフランクフルトがしっかりと立て直し、上昇気流に乗ることができた理由はどこにあったのだろうか?
様々な要因があるなか、とりわけフレディ・ボビッチの代表取締役就任は大きかったと思われる。彼はクラブが掲げるフィロソフィーを明確なものとするためのプロジェクトに取り組み、全スタッフが同じ方向を向いて力を発揮できるベース作りに尽力したのだ。
「クラブにとって、このチャレンジは特別なことだった。それまでそうしたことに大きなメスを入れたことがなかったからだ。我々は確かな競争力のあるクラブになりたかった。そのためにはクラブ内スタッフで知識を獲得し、明確な役割を作り上げ、リーグのなかで戦いきれる競争力を高めていくことが重要だった」
改革を進めるなか、ボビッチは補強選手の獲得指針も整理した。可能な限り安価で選手を獲得し、可能な限り高値で売却するというのはどこのクラブでも考えることだが、具体的にどんな選手を狙えばいいのかを明確にした。