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新設“ブリッジャー級”にボクシング関係者からも疑問が… 勝っても「ヘビー級で王者になれなかった人」扱いにならない? 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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posted2021/04/03 17:00

新設“ブリッジャー級”にボクシング関係者からも疑問が… 勝っても「ヘビー級で王者になれなかった人」扱いにならない?<Number Web> photograph by Getty Images

昨年2月、WBCヘビー級王座を獲得したタイソン・フューリー(右)。ヘビー級選手の大型化は進んでいる

日本ヘビー級チャンピオンの上田龍の意見は

 一方で、18番目の階級に眉をひそめる関係者も少なくない。アマチュアボクシングは10階級だし、他の階級制スポーツに比べてもプロボクシングの17階級は多すぎる印象だ。そもそもヘビー級で体重差が出るのは当たり前。いたずらに階級を増やすとベルトの価値は下がり、「えっ、ブリッジャー級のチャンピオン? ヘビー級でチャンピオンになれなかった人だよね」なんて言われかねないのだ。ひいてはボクシングというスポーツへの信頼を失墜しかねない、という声まである。

 では、現場の選手はどのように考えているのか。日本ヘビー級チャンピオンの上田龍(石神井スポーツ)のもとを訪れると「新しい階級ですか? ブリッジャー級って名前でしたっけ?」とそもそもあまり関心は高くなかった。

新階級に該当する選手は多いが…

 身長190センチ、体重約100キロの上田はブリッジャー級にバッチリ当てはまる体格だ。新階級にあまりピンときていない上田だが、「そのウエートだと105、6キロの選手も落としてくるでしょうから、新階級に該当する選手はたくさんいると思う」と予測した。

 確かにその通りで、ブリッジャー級のリミットである224ポンド+10ポンド(4.54キロ)とすれば、該当するヘビー級トップ選手は少なからずいる。たとえば前WBC王者のデオンテイ・ワイルダー(米)、元WBAヘビー級王者のアレクサンデル・ポベトキン(ロシア)、元クルーザー級4冠王者でヘビー級に転向したオレクサンデル・ウシク(ウクライナ)といったトップファイターたちである。

 問題はこのブリッジャー級にどれだけの選手が価値を見いだし、魅力ある選手が集まり、彼らがファンを引きつけられるような試合をできるかだ。たとえば上田は現時点でブリッジャー級より下のクルーザー級でのファイトも考えているが、それはあくまでヘビー級で活躍するためのステップという位置付けだ。

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