オリンピックPRESSBACK NUMBER
箱根駅伝スター抑え現役日本人学生トップ、“皇學館大”を選んだ川瀬翔矢の卒業後 「パリ五輪にはトラックで」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byJIJI PRESS
posted2021/03/30 11:00
皇學館大を卒業し、4月から実業団で走る川瀬翔矢。関東の箱根駅伝スターたちの中、見事なレースぶりを度々見せていた
「陸上をやめる……」苦しんだ2年時から
2年時は、故障もあって苦しんだ。思うような結果を残すことができず、「陸上をやめる……」などと口走ることもあったという。
転機は3年時にあった。春先にホンダの合宿に参加し、「このチームで競技を続けたい」と思うようになって、川瀬の中に覚悟が芽生えたのだ。
「それまでは中途半端だったというか、成績が良かったら競技を続ければいいし、ダメだったら辞めてもいいや、ぐらいに考えていて、怠けていたところがありました。でも、ホンダに行きたいって思うようになって、覚悟が決まりました。練習量も増えたし、治療に行ったりと、ちゃんとケアをするようになったのが大きかったと思います」(川瀬)
日比監督も、川瀬が変貌を遂げようとしているのを感じ取っていた。
「2年から3年にかけての変化は大きかった。それまでとは行動も言葉も違ってきて、その後に結果が付いてきました。この変化は大きかったと思います」
そして、再び快進撃が始まる。
実業団選手も参加の日本選手権で5000m4位
3年時の秋にはトラックで自己記録を連発。5000mと10000mでは、それぞれ40年ぶり、39年ぶりとなる東海学生記録を打ち立てた。さらに、ロードでも、2020年2月の香川丸亀国際ハーフマラソンで、日本人学生歴代3位の好記録を叩き出した。残念ながら中止になったが、世界大学クロスカントリー選手権の日本代表にも選ばれている。
1年時にインタビューした際には「サインをするのが夢」と初々しいことを口にしていたが、4年間で名実ともに学生長距離界を代表する選手に駆け上がった。
さらに、川瀬の活躍は学生の枠にとどまらない。昨年12月の日本選手権では5000mで4位入賞を果たした。
実業団選手をも打ち負かし、さぞかし自信を深めたのかと思いきや、意外なことに「壁を感じた」と言う。
「自分も走れているのに、もっと強い選手がいる……大きな壁に感じました。
どっちかっていうと、思考がネガティブなんですよね。心も弱いし、走るのも遅い。だからこそ、負けないようにやろうと思えるんですけどね」
そう、川瀬は負けるたびに強くなってきた。東海地区では負け知らずでも、“打倒・関東”を掲げ、力を付けてきた。日本一を決める舞台で4位になったことも、自身にとっては“健闘”ではなく、さらに強くなるための糧に過ぎなかったのだ。