甲子園の風BACK NUMBER
2安打完封で自己採点は「60点」 天理・達孝太“ストレートを待たれても直球勝負でネジ伏せる”スゴさ【センバツ】
posted2021/03/26 17:04
text by
間淳Jun Aida
photograph by
KYODO
「ストレートの調子がよかったので、どんどん押していこうと思っていた」
マウンドの天理・達孝太には、忍び寄る健大高崎の足音が聞こえていなかったのだろう。25日のセンバツ2回戦、天理対健大高崎。5回までスコアボードにゼロを並べ、許した安打は1本だけ。数字だけ見れば万全といえる。
ダメージが残る四球も落ち着いて、けん制で……
だが、健大高崎の打者は、達の球に目が慣れてきたように見えた。健大高崎が2点を追う3回。1番打者の堀江晃生は2アウト一塁で、この試合2度目の打席に入った。
初球のフォークをファウル。続くスライダーもファウル。変化球もストレートもボール球には手を出さず、ホームベースの上を通過した球は全て迷わずにスイングした。フルカウントからの10球目、自信を持って高めの変化球を見逃して一塁に向かった。天理バッテリーにとってダメージが残る四球である。
しかし、冷静だった。
セットポジションに入った達は、二塁へけん制球。140キロを優に超えるストレートも、落差の大きいフォークも投じることなく、ピンチを脱した。
続く4回。健大高崎の2番・吉里竜門は初球の144キロのストレートを引っ張り、レフト前へ運んだ。チーム初ヒット。チームの代名詞「機動破壊」で試合の流れを変えるのか。1アウト後、4番・小沢周平の打席で一塁走者の吉里がスタートする。
だが、天理の捕手・政所蒼太の美しい送球で盗塁失敗に終わる。ここも走塁でチャンスをつぶし、機動力は封じられた。達は「自分は走者を気にせず、打者に集中していた。政所が盗塁を刺して流れを持ってくることができた。心強い存在」と相棒に感謝した。
四球で走者を背負っても要所を締める
安打こそ許さないが、達は毎回のように四球で走者を背負った。