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「君はイチローにはなれないよ」ホークスの背番号“51”上林誠知、過去2年間「打率1割台の低迷」から逆襲なるか
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2021/03/13 17:04
ホークスの背番号51、上林誠知。2019年打率.194、2020年打率.181からの逆襲を狙う
そのトレーナー氏いわく、体のタイプが真逆とのこと。目指すのは大谷翔平や小笠原道大だと教わった。体を左右真っ二つに分けたならば、左半身の方が力を生むタイプ。左打者の上林は前でボールをさばくよりも引き付けて打つ方が打球も強くなるし、体の使い方もよりスムーズになるというわけだ。やや大雑把な表現だが、それを意識して試しにバットを振るとバランスの良さや動きの連動のスムーズさを感じたという。
体の近くまでボールを引き付けて打つ。つまり、打球は逆方向へ飛びやすくなるのだ。
「ブレない」ができるか
昨年の練習試合期間はその打ち方で臨んでいた。そうやって着実に結果も残した。
だがしかし――。上林はこう振り返った。
「自分の中でどこか迷いがあった。結果が出たからそれを続けていたけど、これでいいのかなという思いを持ったまま開幕をした。出だしは良い感じだったけど、調子が落ちた時期があった。その時に我慢しきれず、ブレてしまった部分があった」
悩みという壁は人を大きくする可能性がある。しかし、迷いは成長の邪魔をする。迷ってブレたことが、上林にとって最大の痛恨となった。
今年の上林は、その反省があるのだろう。
「今やっていることを、変えないように、ブレないようにしていきたい」(2月24日、練習試合・ロッテ戦後)
「継続していきたい」(2月28日、練習試合・オリックス戦後)
「これからも自分のバッティングをしていきたい」(3月2日、オープン戦・中日戦後)
「今年はブレることなく、変えることなくやるのが目標。シーズン最後まで続けたい」(3月3日、オープン戦・中日戦後)
同じ趣旨のコメントを繰り返している。まるで、自分に言い聞かせるように。
ただ、打撃とは水ものだ。調子の波という試練は、たとえ小さくとも誰にだって訪れる。連続安打が3月5日の阪神戦で途切れるとやや低調な時期がやってきた。9日の巨人戦は三振、三振、三邪飛、左飛とまるでいいところがなかった。
今年最初の踏ん張りどころだ。
変えない、ブレない。今年の上林はそれが出来るだろうか。