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トップボートレーサー・守屋美穂32歳が明かす“絶頂期に産休を取るという選択”「正直言って悩みました」 

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長田昭二

長田昭二Shoji Osada

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photograph byBOATRACE振興会

posted2021/03/13 11:02

トップボートレーサー・守屋美穂32歳が明かす“絶頂期に産休を取るという選択”「正直言って悩みました」<Number Web> photograph by BOATRACE振興会

トップボードレーサーとして活躍しながら一児の母でもある守屋美穂選手

「ボートレーサーとして最も伸び盛りのタイミングで産休に入ることには、正直言って悩みました。一時的とはいえレースを離脱するのはとても不安でした。出産経験のある女性の先輩レーサーからは『自転車に乗る感覚と同じだから心配いらないよ』と励まされたけれど、自分の中では『そう簡単にはいかないだろうな……』という思いがありました」

 2015年から1年の産休に入った守屋。しかしその不安は的中し、復帰後しばらくは「どん底」を経験する。

「体力が極端に落ちてしまい、腹筋が1回もできなくなっていたんです。ボートの操縦技術も、モーターやプロペラの調整感覚も、全部がゼロからのやり直しでした。ただ、そんな時も周囲の人たちの支えがあって、少しずつ感覚を取り戻すことができました。本当に感謝しています」

 息子はいま5歳。可愛い盛りだが、ボートレーサーは遠征も多い。母として一緒に過ごせる時間は多くない。

「遠征中は両親に預かってもらっています。寂しい思いをさせている分、せめて息子に誇れる仕事を見せたいと思っています。『子どもを育てるため』という思いは、間違いなく大きな原動力になっています。そのためにはケガだけは避けたい。“ケガをせずに稼ぐこと!”これがいまの私の目標です(笑)」

「女子レーサーが増えていることが本当にうれしいんです」

 どんな質問にも丁寧に言葉を選んで、客観的な視点から回答する。単に「強い」「美しい」というだけではない、クレバーな女性であることを強く印象付ける。

 そんな守屋はいま、自分の後に続く女子レーサーの出現を待っている。

「頑張れば必ずいい結果が付いてくるわけではないけれど、ボートレースはいい結果が出たときの喜びがとても大きい競技であることは確かです。頑張っているときは多くの人たちが応援してくれて、結果を出すとその人たちに恩返しができる。その喜びは何物にも代えがたいし、やりがいにもなる」

 現に女子レーサーが注目されることで女子のビッグレースも増えてきた。活躍できる場は確実に広がっている。守屋は「だからこそ、やる気がある人にはぜひチャレンジしてほしい」と続ける。

「女子レーサーが増えていることが本当にうれしいんです。もちろん厳しい世界だし、不安はあると思うけれど、頑張る気持ちがあるなら、私は『大丈夫だよ』って言ってあげたい。

『私みたいな落ちこぼれでもやっていけているんだから、きっと大丈夫だよ』って(笑)」

(【続きを読む】「私は時代に恵まれました」主婦レーサー平山智加35歳に聞く“なぜボートレース界で女性は輝いているのか?”へ)

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守屋美穂

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