2020年M-1・全員インタビューBACK NUMBER
M-1予選バカ受け、アキナはなぜ“あの4分間だけ”スベったのか?「“日本の前”でスベって…地獄です」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byShigeki Yamamoto
posted2021/03/07 11:01
2020年M-1で2度目の決勝進出。8位だったアキナの山名文和、秋山賢太(右)
山名 いえ、よくないやつでした。オンエアが始まって、控室にいるときから、ずっとどこか緊張していて、徐々にそれが大きくなっていってる感じでしたから。アレが流れてなかったんですよね。(各コンビが登場する際の)煽り映像のとき、いつもはバックにハイ・スタンダードの『CAN’T HELP FALLING IN LOVE』がかかってたじゃないですか。でも今大会はヴァン・ヘイレンの『JUMP』になっていて。
僕は、そのハイ・スタンダードの曲が聞きたかったんですよ。楽屋でそれを流しながら、おいでやす小田さんとナレーションの真似をしたりして遊んでいたので。「さあ、舞台は整った! 思う存分、暴れてこい!」みたいな。なので、あの曲じゃなかったのが、なんか残念で。細かいことですけど、そういう小さなズレの積み重ねが緊張感につながってたのかなという気もします。
「“ちょけてる”ときの山名君だった」
――控室からスタジオに向かう長い廊下では、山名さんの笑顔も見られて、楽しめているようにも映りましたが。
山名 あれ、恥ずかしい……。
秋山 僕はちょっと前を歩いていたんで、そのときは、まったくわからなかった。家で録画したものを観返して、初めて知ったんです。山名君は、必要以上に体を動かしたりしてるんですよね。長年一緒にいるんでわかるんです。あれは、緊張しているのを隠そうとして、ちょけてる(おどけてる)ときの山名君なんですよ。
山名 落ち着こう、落ち着こうと。
――マイクの前に立った瞬間、その日のお客さんの感じは、だいたいつかめるものですか。
秋山 普段やってる劇場なら拍手の感じとかで何となくわかりますが、M-1はわからなかったですね。
山名 僕はネタが始まった瞬間、周りの声とかが聞こえなくなった。真っ白な中でやっているような感覚でした。
――準々決勝、準決勝のときは、秋山さんが「好きなん?」って確認するたびに笑いが大きくなっていって、最後の最後で、ドカーンと爆発する。じつにきれいな「右肩上がり」のネタになっていました。
秋山 ケツに向かってどんどん上がっていく構成やったんで。準決勝までは、やってて気持ちよかったですね。
「全員、今すぐテレビを消してくれ!」
――いや、それにしても漫才って、本当に怖いですね。