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長瀬智也とリンクする『俺の家の話』 「介護×プロレス×伝統芸能」が“ただのコメディドラマ”ではない理由
posted2021/02/26 17:01
text by
木俣冬Fuyu Kimata
photograph by
ドラマ『俺の家の話』(公式サイトより)
宮藤官九郎脚本、長瀬智也主演のドラマ『俺の家の話』(TBS 系 金曜よる10時~)はプロレスファンも必見のドラマだ。
長瀬演じる観山寿一がプロレスラーで、所属する団体〈さんたまプロレス〉には長州力が長州力本人として出演し、「キレ(切れ)てねえ」「形変えるぞ」とおなじみの名言を発している。ほかにも第1話には、現役プロレスラーの翔太、勝俣瞬馬、中村圭吾、レフェリーの木曽大介(プロレス監修も担当)が出演、第3話では、武藤敬司、蝶野正洋、TAMURA、渡瀬瑞基なども出演しドラマを彩った。
単に「介護×プロレス×伝統芸能」のコメディではない
寿一が40代になってプロレスラーとしての限界が見えたとき、父・寿三郎(西田敏行)の介護と能の宗家の継承を余儀なくされ、プロレスラー引退を決断する。苦渋の選択をした寿一に辞めないでほしいと後輩レスラーがすがったとき、長州が諭す。
「俺たちが勇気をふりしぼるのはな リングシューズを履くときじゃねえんだよ 脱ぐときなんだよ 察してやんな」
このセリフが、このドラマが単に介護とプロレスと伝統芸能を掛け持ちするコメディではないことを物語っている。もちろん、宮藤官九郎のドラマはいつだって単なる“おもしろ”だけではない。こんなふうにちょっと斜に構えてしまいがちな人たちに漂うペーソスが魅力でもあるのだ。
長州力のセリフにはドラマのテーマを包括するような絶大な説得力があった。1998年に一度引退し、復帰、2019年に再度引退した長州だからこそ響く。しかも彼が後楽園の引退試合で発した名言は「今からUターンして家族のもとに帰ります」である。なんだか「俺の家の話」の寿一と重なって見えてくるではないか。
“自分の限界を見極める”とは、どういうことか?
自分の限界を見極めることは、プロレスに限ったことではない。主として身体を使うこと――成績の優劣や勝ち負けのある競技では、身体能力の限界が歴然として突きつけられる。多くのアスリートが常にこの限界問題と戦っている。