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交際0日で結婚→ブラジル代表コーチ中に妊娠→長男出産… 藤井裕子監督と夫のスゴい柔道指導者人生
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byNaoki Nishimura/AFLO
posted2021/02/24 17:11
2019年世界柔道での藤井裕子監督
――この年の5月、夫婦でブラジルへ渡ります。当初の仕事は?
「ブラジル各地を回り、子供から大人まで選手を指導しました。柔道指導者向けの講習会もやりました」
妊娠について、連盟の関係者は「全く問題ないよ!」
――ポルトガル語はどうやって勉強したのですか?
「ブラジル五輪委員会が、最初の1週間だけ、英語がわかるブラジル人の通訳を付けてくれた。また、週に2回、家庭教師を派遣してくれた。そして、柔道を教えながら実地で覚えた。間違ったことを言って笑われながら、正しい言い回しを覚えていきました」
――ブラジルへ着いてからほどなく、妊娠がわかったとか?
「そうなんです。でも、すぐにはブラジル柔道連盟の上司に伝えられなかった。柔道のコーチとして来たのに、妊娠しているとわかったら契約を解除されるかもしれない――そう考えて、悶々としました。
でも、安定期に入ってから、思い切ってブラジル柔道連盟の親しい人に伝えた。それから上司に会い、『妊娠しましたが、可能な限り、コーチとしての仕事を続けたい』と伝えました。すると、『全く問題ないよ。おめでとう!』と言ってくれた。ほっとしたし、『この恩を絶対に返さなくては』と心に誓いました。
――その他のブラジルの柔道関係者の反応は?
「皆、笑顔で祝福し、励ましてくれた。これは本当に嬉しかった。自分も、『妊娠は病気じゃないんだ。できる限り、仕事を頑張ろう』と思いました」
日本からの反応は厳しかったが
――ご両親や日本の親しい人たちの反応は?
「こちらは、非常に厳しかったです。『何を考えてるの』という声が肉親や親しい友人からもあった。つらかったですね。『理解してもらえないかもしれないけれど、見守っていてください』という気持ちでした。
でも、私にとって一番重要なのは自分の職場での反応で、こちらは大丈夫だった。あとは、妊娠していてもどうやってコーチの仕事を続けるかを考えた」
――当然、身体接触があります。体は大丈夫だったのでしょうか?