2020年M-1・全員インタビューBACK NUMBER
「おいでやすこがを見て、マズいな」 つり革か、フレンチか…迷うマヂカルラブリーを救った“2分40秒間のCM”<M-1ウラ話>
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byShigeki Yamamoto
posted2021/02/21 11:02
2020年M-1で優勝したマヂカルラブリーの野田クリスタルと村上
野田 初出場だったら、「つり革」をやっていたでしょうね。初めてM-1に認められたネタということになるので。でも今大会は、「つり革」が自分たちのいちばん強いネタだとわかっていて、2本目まで残せれば、確実に優勝できると思っていたんです。
――前年かまいたちが、出番順を決める「笑神籤(えみくじ)」で2番クジを引き、最終決戦に温存しておいたネタ(USJ)を急遽、1本目に持ってきました。マヂカルラブリーも同様に不利だと言われる1番クジもしくは2番クジを引いていたら、ネタを入れ替える可能性もあったのでしょうか。
野田 トップだったら、「つり革」をやっちゃおうかなと思ってました。そもそも、僕らのネタの中に1番手に向いてるネタはないんですよ。劇場でも、おれらには絶対トップはやらせないですもん。
東京ホテイソンのネタが「フレンチ」に似てて…
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――むしろ、何番でも行けそうな気もしますが。
野田 いや、おれらほど順番が大事なコンビはないですよ。
村上 ちゃんとした漫才が出てから僕らが出たほうが違いが分かるじゃないですか。普通の餃子を食べたあとにチョコ餃子が出てきた方がより特色が際立つというか。いきなりチョコ餃子が出たらびっくりするでしょう?
――結局1番、2番クジは引きませんでしたが、それでも本番が始まってから、再びネタ順についてかなり迷われたそうで。
野田 2番手の東京ホテイソンの点数が低かったんですよ。
村上 617点。
野田 ホテイソンのネタが、「フレンチ」の構成に似てたんです。最初にいちばん強いボケがあって、全体のボケ数が少なめで、ちょっと尻すぼみする。それで不安になったんです。おれらも同じになるかも、と。しかも3番手のニューヨークが642点、4番手の見取り図が648点と高得点が続いて、5番手のおいでやすこがで最初の大爆発が起きた。そこまでで最高得点の658点が出て、最終決戦は、もうこの3組で決まりなんじゃないかと思ったんです。
おいでやすこがを見て「まずいな」
――コンビによっては自信を失うのが嫌で、よその組のネタは見ないという方もいます。お2人はけっこう見ていたのですか。