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「なぜ曺貴裁監督のハラスメント問題は起こったのか?」から考える“深刻なサッカー界のメンタル事情” 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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posted2021/03/04 17:03

「なぜ曺貴裁監督のハラスメント問題は起こったのか?」から考える“深刻なサッカー界のメンタル事情”<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2019年10月に湘南ベルマーレの曹貴裁(チョウ・キジェ)監督がコーチングスタッフや選手に対するハラスメント行為が認定され、その後、退任が発表された。その後、2020年12月より京都サンガF.C.の監督に就任している

「指示が強すぎれば、他人を尊重できずにハラスメントへ発展してしまいますが、一方で、支援だけに偏れば、監督の意義はなくなってしまいます。『怒ることがいけないのではない』というのはまさにそういう意味です。常に選手を尊重して、指示と支援のバランスに気を配ることが重要ですね」

DFは思考型、MFは両立型、ではFWは……?

 選手、監督、レフリー……立場が違えばメンタルの特徴も変わってくる。さらに木村医師は、選手の不安障害や精神疾患は性別・ポジションによっても、違いが出てくると指摘する。そう聞くと、FWなど点を取る選手は気持ちが強そうに見えるが……。

――ポジションによってもメンタルの強さなどに違いが出てくるのですか。

「基本的にDFの選手は、いわゆる思考面が優れた人が多いですね。相手が来た時、自分がどう動けばいいのか、相手はどういう動きをするのか、事前に分析することが必要なポジションですが、まさにそれは思考です。MFの選手はバランスがいい。思考もあるし、感情もある。遠藤保仁選手がまさにそうですよね。

 FWは基本的にポジティブな思考が強い選手が多い傾向ですが、それがしっかりと積み重ねた上での自信なのか、それともただ単に個性なのかで選手生命が変わってきます。GKは、ちょっと変わっている人が多いかなと思います(笑)」

女子サッカーにも「メンタルケアが重要」

――選手でも男子と女子では、メンタル的な違いがありますか。

「もちろんです。出産や生理といったライフイベントもありますし、監督と選手の関係性の面でも違うので。

 例えば、男子サッカーでは監督と選手が同性であるパターンが多いですが、女子サッカーでは、監督が女性だったり、男性だったりします。男性が監督の場合、ある程度、選手である女性に気を使って指導してくれる一方で、上手くコミュニケーションができなくなるケースもあります。しかも女性は1カ月に1度、ホルモンバランスが崩れてテンションや動きにも変化が出てしまいます。この変化は妊娠や出産でも起こります。

 こういうことは男性であれ、女性であれ、監督がケアできることではありません。男子サッカーよりも精神科医やスポーツメンタルの専門医がしっかりサポートできる体制を整える必要があると思います」

◆◆◆

 2014年ブラジルW杯でドイツが優勝した時、注目されたのはメンタルトレーナーの存在だった。日本では、代表はもちろん、クラブも精神科医やメンタルケアの精神科医やトレーナーを置いているところはほとんどない。メンタルを整えるのは自己責任になっているのだ。

 コロナ禍で環境が変わり、SNSなどあらゆるところから見られ、ストレスを抱える選手にとって、気軽に相談できる存在は必要不可欠と言える。常駐とはいかないまでも、週1回などカウンセリングの時間を設けるなど、心の病を発症する前に対処することを考えていくべきだろう。

(【続きを読む】「柱=バイエルン?」「善逸は危険な状態」スポーツメンタル専門医が『鬼滅の刃』を読み解いたら…… へ)

(写真=平松市聖)

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