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変幻自在な井上尚弥がレベルの差を見せたが…比嘉大吾が「もっと大きいと思った」と収穫を語るワケ
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byKyodo News
posted2021/02/12 17:05
「LEGEND」で比嘉大吾(右)と拳を交えた井上尚弥。2人は試合後、この先の決意を語った
比嘉との対戦を「すごく楽しみにしている」
比嘉が調整不足だったとすれば、井上も今回の体重は62キロ。試合であればバンタム級リミットの53.5キロから4キロ程度の増量でリングに上がるから試合よりも4、5キロ重かったということになる。井上が「自分も体重を絞っているわけではないので、試合ほどのスピーディーな動きができるかといえばそうではない」というように、当たり前であるがこちらも試合のときの仕上がりとは違っていたのだ。
昨年10月、アメリカで防衛に成功した井上は次戦でIBFの指名挑戦者、マイケル・ダスマリナス(フィリピン)との防衛戦が濃厚となっている。その先に見据えるのはバンタム級の4団体統一だ。他団体王者の動向、新型コロナウイルスの収束状況もあり、4団体統一がいつごろまでにできるのかの見通しは立っていない。
昨年大みそかにバンタム級のWBOアジアパシフィック王座を獲得した比嘉は世界挑戦のウェイティングサークルに入ったものの、井上が4団体制覇を狙っている状況ではおいそれと世界戦の舞台に上がることはできない状態だ。
それでもなお、27歳の井上の背中を25歳の比嘉は追いかける。バンタム級にクラスを上げた以上、打倒井上こそが比嘉のミッションに違いない。井上は「比嘉選手がそういう立ち位置に来てベルトを持つ選手になれば、対戦が可能になると思う。すごく楽しみにしている」とエールを送った。いつの日か2人の対戦が実現したとき、私たちはLEGENDでの“対戦”を思い出すことだろう。