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変幻自在な井上尚弥がレベルの差を見せたが…比嘉大吾が「もっと大きいと思った」と収穫を語るワケ
posted2021/02/12 17:05
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Kyodo News
現役世界王者や元世界王者のOB、アマチュアの東京五輪代表らがエキシビションを披露するボクシングのチャリティーイベント「LEGEND」が11日、東京の代々木第一体育館で開催された。メインイベントで拳を交えたのはバンタム級でWBAスーパー、IBF王座を保持する井上尚弥(大橋)と元WBC世界フライ級王者にしてバンタム級で2階級制覇を目指す比嘉大吾(Ambition)。2人のボクサーの今後を占う意味で興味深いエキシビションとなった。
井上尚弥がファンの前でボクシングをするのは2019年11月、さいたまスーパーアリーナでノニト・ドネア(フィリピン)に勝利したワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)決勝以来のこと。3分3ラウンドのエキシビション、グローブは公式戦の8オンスではなく、12オンスとはいえ、そのパフォーマンスが注目された。
将来の挑戦者候補、比嘉大吾は試合後に
対戦相手に指名された比嘉大吾は15連続KO勝利の日本タイ記録を保持し、現在はバンタム級の世界ランキングでWBA8位、WBC14位にランクされている。いわば井上にとっては将来の挑戦者候補であり、比嘉にとっては世界に向けた絶好の腕試しとも言えるマッチアップだった。
組まれた7カードのトリを務めた両者。スタートからグイグイと相手を攻め立て、実力を存分にアピールしたのは井上だった。比嘉がスパーリング後、「もっと距離を取れたはずなのに」と振り返ったように、井上は比嘉が得意とする接近戦もいとわず、相手に攻めさせておいてカウンターを打ち込んだり、足を使って翻弄したりと、変幻自在なボクシングを披露。最終3ラウンドはヘッドギアを外し、ロープを背負って比嘉に攻めさせるという余裕も見せて9分間の“井上劇場”を終わらせた。