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藤井聡太の天才性を名棋士はどう評したか 「現状で勝つプランがない」「まるでモーツァルト」【18歳で朝日杯3度目V】
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byJapan Shogi Association
posted2021/02/11 17:00
藤井聡太が史上最年少タイトル獲得を達成した棋聖戦第4局。ここから天才の快進撃が始まった(代表撮影)
<名言4>
現状では藤井さんに勝つプランがありません。だっていまから藤井さんのような終盤力を身につけようとしても無理だから。
(渡辺明/Number1010号 2020年9月3日発売)
◇解説◇
「藤井聡太、17歳10カ月20日の史上最年少でタイトル獲得」
日本列島を駆け巡ったビッグニュースは、将棋を長く愛する者には別の衝撃を与えていた、タイトルを初めて藤井に奪われた人間となったのが、あの渡辺明だったのだから――。
渡辺名人は言わずと知れた将棋界のトップランナーだ。竜王11期(永世竜王)や棋王8期(永世棋王)など、歴代5位となる計26期のタイトルホルダーで、史上4人目の中学生棋士としても知られている(5人目は藤井二冠)。そんな渡辺が、1勝3敗で負けたのである。
特に第4局後には自身のブログで<負け方がどれも想像を超えてるので、もうなんなんだろうね、という感じです>と棋聖戦を総括したことが話題になった。すでに将棋史に名を残し、円熟期に入りつつある36歳の大棋士にここまで言わしめた、藤井二冠の棋力たるや恐るべし、である。
ただ、渡辺名人はこのようにも話している。
「棋聖戦は藤井さんとのタイトル戦初対戦だったので、向こうの情報はほとんどなかった。でも番勝負で指して分かったこともある。だから次は普通にやりますよ」
渡辺もまた、負けてそのまま勢いを失うような棋士ではない。2020年には自身初となる名人位を獲得し、現在は棋王、王将との三冠を保持している。藤井二冠との再戦となった際には、「普通にやりますよ」の神髄を見せてほしいところだ。
Sports Graphic Number
1年間で最も観る者を興奮させ、輝いたアスリートに贈る「Number MVP賞」。39回目となる2020年のMVP賞は、史上最年少で2つのタイトルを獲得した藤井聡太二冠に決定いたしました。棋士の受賞は初めてのこととなります。