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「藤井聡太二冠戦は悪戦苦闘でしょう」窪田七段が振り返る28年間の順位戦<渡辺明竜王『バッカすぎる』発言とは…>
posted2021/02/08 17:02
text by
小島渉Wataru Kojima
photograph by
KYODO/Imai Tomosuke
窪田七段は兄弟子の深浦康市九段と同じく1972年生まれで、羽生世代の少し年下だ。現役生活は4月で28年目を迎え、全棋士参加棋戦ではベスト4入り3回(非公式戦を含む)の実績がある。
順位戦は1年間に及ぶリーグ戦で、相撲の番付のように棋士の名前が並ぶ棋戦だ。勝敗で順位やクラスが入れ替わり、その変遷をたどれば棋士のポジションが把握できる。窪田七段は真ん中のB級2組に所属しているが、そこにたどり着くまでは波があった。順位戦の道のり、振り飛車党の矜持、藤井聡太二冠戦の意気込みをお送りする。(全2回の後編/前編へ)
◆◆◆
――窪田七段の順位戦初参加は、1994年度の第53期C級2組です。1期目は8勝2敗と昇級レースに絡む活躍を見せます。ところが、第58期(1999年度)と第60期(2001年度)に降級点がつき、30代を目前にフリークラス陥落の危機を迎えました。
窪田 手ぬるい。体調不良もありましたけど、優勢でも腰を落とす・敗勢でもうひと踏ん張り、そこが足りなかったです。
――しかし、第61期にC級1組に昇級します。降級点2つを取ってからの昇級は、故・木下晃七段と窪田七段の2人しかいません。昇級の要因は何ですか。
窪田 なんとなく臨んだことでしょう。普通は降級点におびえて必死になったり、カチカチになるかもしれないですけど、とにかく指すかという気持ちでした。初戦の橋本崇載四段(現八段でA級1期)に逆転勝ちできたので、今期は違うかなと思いましたね。
渡辺明竜王「バッカすぎる……」を振り返る
――C級1組では第63期(2004年度)に降級点が付きます。しかし、その翌年は7勝3敗で降級点を消しました。最終戦は勝てば昇級だった渡辺明竜王(肩書は当時で、21歳。現名人)を負かします。昇級失敗を覚悟した渡辺竜王が投了後に「バッカすぎる……」とうなだれたのは有名な話です。