酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
甲子園準V腕・安樂智大24歳が打撃投手、守備職人・藤田一也38歳は育成選手並みに… 楽天二軍キャンプの生存競争
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2021/02/10 18:30
田中将大の加入で湧く楽天だが、二軍キャンプでも安樂らが熾烈なアピールを続けている
内野では投内連携からシートノックへ。三塁で背番号「86」塩川達也コーチの球を受けている背番号「6」は藤田一也である。
当年とって38歳。ノッカーの塩川コーチとは同い年、しかも2004年ドラフトの横浜4巡目(藤田)、楽天5巡目(塩川)だ。もう慣れただろうが、同い年のコーチの球を受けるのはどんな心持ちなのか。藤田がボールを取りこぼすと、「ほらぁ! もう一丁」と塩川コーチが大声を張り上げる。背番号三桁の育成選手たちと体を動かすアラフォー選手の表情は明るかった。
2017年ドラ2、岩見は守備でも軽快な動き
筆者は楽天に以前から気になっている選手がいる。岩見雅紀、背番号「38」だ。慶應義塾大学時代には年間12本塁打の東京六大学記録を打ち立てたスラッガーで、2018年ドラフト2位で入団した。
入団1年目の久米島二軍キャンプで、思わず外国人育成選手かと思って「ハロー!」と声をかけてしまった苦い記憶がある。それほどまでにたくましい容貌と187cm100kgという巨体から繰り出される長打力が魅力だ。
1年目のオフには台湾ウィンターリーグに派遣されると、ヤクルトの村上宗隆、ロッテの安田尚憲とイースタン選抜の中軸を打ち、長打を連発していた。
さぞや活躍するだろうと思ったのだが――昨年初本塁打を放ったとはいえ、すっかり評判が立たなくなっている。
それでも岩見は、外野と一塁を掛け持ちして軽快な動きを見せた。以前はやや鈍重な印象があったが、心なしか守備もシェイプアップされたのではないか。
2013センバツ準V右腕・安樂智大が
昼休みを挟んで打撃練習が始まる。一塁側のブルペンでは、立派な体格をした背番号「20」が投球練習を始めた。安樂智大だ。
愛媛・済美高で2013年春の甲子園の準優勝投手。名将として知られる故・上甲正典監督の遺愛の弟子として2014年ドラフト1位で入団するも、6年間で6勝14敗、高校時代の球速が戻らず苦戦している。昨年はセットアッパーとして5ホールドを挙げたが、彼も勝負の時期を迎えている。