酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
甲子園準V腕・安樂智大24歳が打撃投手、守備職人・藤田一也38歳は育成選手並みに… 楽天二軍キャンプの生存競争
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2021/02/10 18:30
田中将大の加入で湧く楽天だが、二軍キャンプでも安樂らが熾烈なアピールを続けている
――今年のキャンプは例年に比べるとずいぶんイレギュラーになりましたが、一番気を使っていることは?
「さまざまな方のご尽力でキャンプができています。選手が感染防止への意識を高めていく中で、シーズンに向けて努力できるように1人ひとりテーマを持たせています。若い選手もいますが、藤田一也をはじめとするベテランの調整組もいますので、とにかく頑張れる環境を作りたいなと思います」
――今年は練習が終わっても会食したり飲み歩いたりできません。若い選手たちにはストレスがたまると思いますが?
「これは我々だけじゃなく世界中そうなので、仕方ないですね。ただどうやってリフレッシュさせるかは考えないといけない。
先日、若い選手に“練習に取り組む姿とか、目の輝きなどを見ていると、いい練習ができている。この環境下でがんばる君たちを尊敬している”と話しました。言いたいことや不満はあるだろうけど、こういう時期を経験して乗り越えれば新しい展開が見えてくるので、この状況で前向きに取り組むことが大事だと思いますね」
「いかに選手の心を動かせるか、を」
――今日は安樂智大投手が打撃投手で投げていましたが、二軍には再起を期す選手もたくさんいますね?
「それぞれのポジションのコーチがいますので、細かいアドバイスはコーチがしますが、僕は選手が頑張れるようにいろいろ気を配って、かける言葉1つにしても考えます。時にはじっと見ているだけの時もありますが、総合すればいかに“選手の心を動かせるか、きっかけを作れるか”が大事ですね。安樂はブルペンで投げ込むなど努力をしていますが、まだ足りない部分があります。それを彼がどう乗り越えるか、背中を見つめています」
――三木監督はヤクルト時代、若き日の山田哲人選手をじっくり指導していました。個人的には「若い選手を育てるプロだ」と感じています。
「育てているつもりはないんですが、せっかくこうして出会えたんですから選手たちの力になれたらと考えています。そのためには僕自身もいろんな知識を取り入れて、キャパを拡げないと。まだまだですが、選手には信頼されたい、頼られたいので、そのためにはこれからも勉強です」
プロ野球では台頭するのも、復活するのも、選手自身の努力であり、ポテンシャルの賜物だ。二軍監督という仕事はそんな選手を「見つめる」ことが仕事だ。
技術だけでなく、メンタルやものの考え方などがどう変化したかを見逃さずに、的確に声をかけ、上に推薦する。
若い選手が好きで、力を引き出すのが得意な三木肇監督はまさに適任だと思った。