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錦織圭「調子が戻ってきてもまだ勝てない」 揺れる心と1つの確信…復活へ最後のピースは見つかるのか
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHiromasa Mano
posted2021/02/09 17:50
カレノブスタ相手に現時点では“力負け”となったが、錦織圭はここから巻き返せるか
その中でのトップ10との2試合、「自分のテニスを取り戻すには、あまりいい出だしではなかった」のは仕方がないだろう。
ところが、シュワルツマン戦から中1日で、錦織は状態を大きく改善させていた。そこがこの男の非凡さである。
「ボールをとらえる感覚と球筋と、いろいろよかった」
試合開始早々、いい感触があった。
「今までにないくらい、試合に入って、勝てるんじゃないかと思える出だしだった。それくらい、ボールをとらえる感覚と球筋と、いろいろよかった」
試合前には「調子いいなとか、特に思わなかった」という。ところが、「いきなり、いいイメージがあって、いいプレーが出始めた」。
長いブランクを取り戻す過程で、この覚醒は何度か経験していた。だから、いつか来る、と信じて待った。そうして、わずか3戦目でその瞬間がやってきた。
難敵カレノブスタの前に動きが重くなり
ただ、この1回戦の相手は大会第15シード、自己最高ランキング10位のパブロ・カレノブスタ。グラウンドストロークに絶対の自信を持つ難敵で、実力はトップ10と遜色ない。第1セット、第2セットとも劣勢からタイに追いついた錦織だったが、最後は押し切られ、セットカウント0-2となった。第3セットは動きも重くなり、リスキーなプレーも増えて2-6で失った。
「バックハンドのクロスだったりフォアのクロスも、自分にとってディフェンスに回らないといけないタフなショットだった。彼のプレーは確実によかった。強いなって感じました」
2年前の全豪で5時間に及ぶ大熱戦の末、なんとか振り切った相手に、今度は脱帽するしかなかった。全豪では初出場の09年以来12年ぶりの1回戦敗退となった。
記者会見で試合を振り返る錦織の言葉は、様々な心境が入り交じり、モザイク模様を描いた。