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錦織圭「調子が戻ってきてもまだ勝てない」 揺れる心と1つの確信…復活へ最後のピースは見つかるのか
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHiromasa Mano
posted2021/02/09 17:50
カレノブスタ相手に現時点では“力負け”となったが、錦織圭はここから巻き返せるか
「自分のプレーもよかったので、そんなに落胆はしていないですけど、でも、これくらい(調子が)戻ってきてもまだ勝てないんだなっていうのは、ちょっと違うショックというか。微妙なところです」
勝てるんじゃないか、という期待感がたちまち霧消し、あらためて上位選手との隔たりの大きさを味わった。心はジェットコースターのように揺れていただろう。
それでも、「(右ひじの故障から復帰した)去年も含めて一番、プレー内容はよかった」という確信もあった。
アンフォーストエラーも42本あったが、ウィナー36本はまずまずの数字だ。彼のプレーを評価する基準となるフォアハンドは悪くなかった。しっかり回転のかかったトップスピン、上から叩くフラット気味のショットとも、長いブランクを感じさせない切れ味だった。錦織自身、ストローク戦は納得のいく出来だったようだ。
「先週はちょっと焦りすぎていたのもあったので、今日はじっくりやろうと思ってスピンをかけて、それが(うまくいって)ラリーができて、リズムができて、しっかり打ち合える球がいっていた」
錦織の真骨頂である勝負勘が、まだ欠けている
一方、試合で明らかになった課題は勝負どころでのプレーのクオリティだ。錦織が振り返る。
「大事なポイントでのプレーがちょっと悪かったですね。タイブレークのプレーの仕方を忘れたんじゃないかっていうくらいミスが多くて、もうちょっとじっくりやりたかったですね、あそこ(第2セットのタイブレーク)は。選択ミスみたいなのがちょっとあったので」
今までの錦織は、必ず試合の要所を押さえて勝ってきた。その勝負勘が、今はまだ欠けている。これが復活への最後のピースとなるだろう。感覚と同じく、勝負勘も前触れなしに突然戻ってくるものだという。
「戻ってくれれば、と言うか、やってるうちに戻ってくると思うので、そこがいつクリックしてくれるか」
これまで何度も故障を乗り越えてきた錦織は、待つこと、耐えることの大切さを知っている。勝ち星を増やし、試合数をこなしていけば、必ずその瞬間が来る。全部のピースがはまる。ただ、下を向いているとその瞬間を見逃してしまう。だから、錦織は、自分にこう言い聞かせるのだ。
「負けたことはちょっとキツイですけど、なるべく前を向いて。いつ来てもいいように、気持ちがネガティブにならないようにしたいなと思います」