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錦織圭「調子が戻ってきてもまだ勝てない」 揺れる心と1つの確信…復活へ最後のピースは見つかるのか
posted2021/02/09 17:50
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Hiromasa Mano
昨年の錦織圭は右ひじの故障とコロナ禍でのツアー中断、復帰後の右肩痛もあって、公式戦出場は4大会にとどまった。トップ10選手と対戦する機会はなく、シーズンオフの取材ではこのことに「若干、心残りがある」と話した。
「ちょっとあのレベルでの戦いっていうのを忘れてる自分がいるので、そこは早くやりたいなと思います。楽しみは楽しみです」
当面の目標はトップ10への復帰だからこそ
当面の目標はトップ10への復帰である。そのためにもトップ10選手と戦いたい、自身の現在地を確認しておきたいという気持ちを「楽しみ」という言葉に込めたのだ。
年が改まり、いきなり願いがかなった。全豪オープンの前哨戦として開催された団体戦ATPカップで、ロシアのダニル・メドベージェフ(世界ランク4位)、アルゼンチンのディエゴ・シュワルツマン(同9位)と対戦する機会に恵まれた。
メドベージェフには2-6、4-6で完敗。ただ、昨年の全仏以来約4カ月ぶりの公式戦であったにもかかわらず、「思ったより悪くなかった」とそれなりの手応えもあった。しかし、シュワルツマンにも1-6、7-6、0-6で敗れ、自信が揺らぐ。低空飛行のスタートから、第2セットは勝負強さを見せたが、そこでガス欠となった。試合後、「頭と体が一致していない」と話した。第2セットを見れば、そこまでひどい出来ではないと思われたが、自己評価はそれくらい低かった。
好材料が極めて少ない中での急ブレーキ
久々のトップ10との2試合は「不安すら感じる試合」となってしまった。そうして迎えた全豪オープンである。
好材料は極めて少ない。そもそも、遠征のスタートで思いがけず急ブレーキがかかった。
米国からチャーター機で現地入りしたが、同乗者から新型コロナウイルスの陽性者が出たため、錦織もホテルでの15日間の完全隔離を強いられた。2週間の隔離は覚悟していたが、選手に特別に許された1日2時間の練習やジムワークも禁止されたのだ。ただでさえ、公式戦から離れていたため試合勘の不安がある。それに加え、調整不足どころか「ボール勘」さえ失いかねない危機的状況となった。