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フランスメディア「東京五輪は“開催するしかない”」その理由は? 24年パリ五輪は順調〈スポンサー目標額46%を確保〉 

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高崎順子

高崎順子Junko Takasaki

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posted2021/02/04 17:02

フランスメディア「東京五輪は“開催するしかない”」その理由は? 24年パリ五輪は順調〈スポンサー目標額46%を確保〉<Number Web> photograph by AFLO

東京五輪組織委員会・森喜朗会長(右)、昨年発表された24年パリ五輪のロゴ(左)

 リベラシオン紙では昨年9月、カリン西村記者が、膨らむ東京五輪関連予算と、五輪開催より自国の経済復興を案じる日本国民の心情をレポート。ル・モンド紙のフィリップ・メスメール記者は昨年11月の記事で、著述家・本間龍氏のツイートや日刊ゲンダイの記事を紹介しつつ、日本で高まる五輪開催反対派の声を取り上げた。

 そして先月末、英国の老舗日刊紙タイムズが東京五輪開催を危ぶむ報道をした際には、カルロス・ゴーン関連本でも知られる日本通レジス・アルノー記者が筆を執った。 日本の世論や五輪組織委員会のあり方を問いつつ開催可能性を分析する記事を、ル・フィガロ紙にて配信している。

 このアルノー氏の記事で興味深いのは、東京五輪は「開催する」に留まらず、「開催するしかない」状況にあるとも読めるニュアンスだ。

日本の五輪関係者の「隠された、強い動機」とは?

「この段階で、(東京五輪の)延期や中止を正当化できるような客観的な理由はない」 

 これは記事内で紹介された、東京在住のフランス人スポーツジャーナリスト、フローラン・ダバディ氏の見解だ。続いて記事では、昨年の延期決定前に真っ先に不参加を表明したカナダ五輪協会が今年は参加声明を出していること、日本で昨年行われたスポーツイベントで感染クラスターが発生していないことなどを明示している。

 それでも東京五輪開催が日本国民の支持を集められない原因として、五輪組織委員会の広報戦略の欠落を指摘した。ロンドン五輪やパリ五輪のように、五輪で英雄的な成果を上げた元選手の「顔」 がいない東京五輪の組織委員会(※)。代わりに記者会見で前面に出てきているのが、83歳の政治家と77歳の元官僚であることも。(※ロンドンはセバスチャン・コー〈元陸上中距離〉、パリはトニー・エスタンゲ〈元カヌー・スラローム〉の名前を挙げている)

 記事の末尾では、日本の五輪関係者の開催に向けた「隠された、強い動機」が述べられている。菅総理が「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」と位置付けた五輪を、万が一2021年に東京で実現できなかったら? 直後の2022年に冬季五輪が開催されるのは、新型コロナウイルスの発生国・中国の北京なのだ。それは日本の関係者にとって、それこそ「オリンピック級のbobard(でたらめ)」であろう……と、アルノー氏は記事を結んでいる。

 フランス国内で東京五輪の関連報道を見ていると、東京五輪は延長も中止もなく、開催される見込みを感じる。しかしこの感触の前提には、次の夏季五輪開催国・フランスという文脈があることは、忘れずに留意したいところだ。先日の森委員長の性差別発言に関してもAFPが速報しル・フィガロ紙などが報道したが、開催自体の是非には触れられなかった。

 開催予定まであと半年、延期か、中止か、強行か。オリンピックに様々な利害関係のある諸外国が、それぞれの思惑と関心で今、日本を見つめている。

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