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ブンデス降格候補→大健闘のクラブで響く負傷出遅れ… 遠藤渓太よ、監督の「腹の中の感情」をつかめ
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/02/01 11:03
チームが好調も、自身の出番は限られる。遠藤渓太はそのジレンマを乗り越えたい
クラブとしての立ち位置や歴史、そして出揃った選手の顔触れを見れば完全にアンダードッグ。しかし、逆境の中だからこそ力を発揮できる選手たちがここでさらに力をつけ、羽ばたいていく足掛かりを築き上げようとしている。
監督の“コミュ力”の高さにも要注目
ウルス・フィッシャー監督の手腕も光る。フィッシャー監督はこれまでも確かなチームを作る手腕に定評があった。コミュニケーション能力が高く、自分が頭に描くイメージを言葉とジェスチャーでクリアに伝えることができる。だから、選手もプレーしやすい。
リバプールが保有権を持つFWタイウォ・アウォニイは、「監督は僕に何を期待しているのか、どんなプレーをするべきなのかを明確に話してくれた。これまでも素晴らしい監督の下でプレーしてきたけど、フィッシャー監督ほどわかりやすくはっきりと伝えてくれる監督はほとんどいない」と絶賛している。
フィッシャー監督は自分たちの立ち位置をよくわかっている。モットーはセーフティーファースト。安易な響きに聞こえるかもしれないが、「クリエイティブなオフェンシブ・サッカーをするんだ」といった響きのいい言葉ばかりが強調されて、実はチームとしての組織がグタグダになってしまうところも少なくない。
徹底的に、愚直にやり続ける組織化
徹底的な組織化。ウニオンはブレがまったくない。出場する選手はピッチ上でやるべきプレーを理解している。
ボールを奪われたら、相手がボールを持っていたら、中盤へ侵入されたら、自陣へ押し込まれたらどうするのか。あるいはボールを奪ったらどこへ走りこむのかということまで、しっかりと浸透しているのだ。練習で何度も繰り返し、状況を整理し、状況ごとのポジショニングを理解し、ポジショニングごとのプレーを実践する。
プロクラブとしては当たり前のことかもしれないが、当たり前の基本にどのチームより集中的に、丁寧に取り組んでいる。そうした努力が生む実践力の確かさが、いまブンデスリーガでしっかりと発揮されているというわけだ。
チームとして徹底的に愚直にやり続ける。そんな戦術に貪欲に取り組める選手がピッチに立つ。ボールポゼッションが大事なのではない。アタッキングサードでの驚きのプレーが必須なのではない。試合の流れを掌握し続けることが求められているわけでもない。