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冨安健洋、セリエAでボール奪取&クリア1位! 名DFも驚く“攻守の完璧さ”と本人が語った予測力の秘訣
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/01/20 06:00
20代前半とは思えぬ風格を漂わせる冨安健洋。元イタリア代表DFも絶賛しているほどだ
手塩にかけて育てている怪物DFをまだ満天下に知られたくない、もう少し手許に抱えておきたい、といった指導者としての欲がにじみ出がちな闘将は、そもそも個人名を挙げて褒め称えることを嫌う。
「両SBができるし、CBもできる。頭も使える」
だが、冨安にベタ惚れの旧友コスタクルタからどう思うかと執拗に迫られ、根負けしたように「メラビリオーゾ(=マーベラス)」という、滅多に使われない最高級の褒め言葉を使った。
「弱点があるとしたら、ずる賢さや意地の悪さが足りないところだ。トミヤスは悪い考えができない。(生真面目とされる)日本人だからな。だが、SBとして右も左もできるし、CBもやれる。両足が使えてスピードもあり、(空中戦で)頭も使える。重要な選手だ。日本人とは思えん(笑)」
最後の一文は指揮官得意のシニカル・ジョークだが、これを偏見だと騒ぎ立てる必要はない。ピンチとなれば、冨安が平然とイエロー覚悟の戦術的ファウルを実行できることを指揮官はちゃんと知っている。
1年前、冨安に聞いた“スピードと予測”の話
冨安の最大の売りは188cmの当たり負けしない強靭なフィジカルと広いストライドから繰り出されるスピードだろう。
しかし、ほぼ1年前に冨安へ話を聞いたとき、彼からこう訂正された。
「五分五分で(相手と)バチンと当たるときというのは、僕の感覚だと遅れているんです。僕自身は体の強さというより、スピードで勝負していくべきだと思っているので。ただの足の速さではなくて、予測だったり判断だったり、そのスピードが大事なんです」
「予測して先を読んで、相手の先手先手をとって守る。そういう方が僕には合っている。センターバックではそうしないとうまく守れません」
試合中、冨安の頭の中では数秒先に起こりうるプレーが常に目まぐるしくシミュレートされているのだろう。自身の肉体的アドバンテージに甘んじることなく、思考する速度が大事だと訴えて研鑽してきた若武者は、セリエAのDFとしてトップレベルに手をかけようとしている。