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野球は「青春ドラマ」に向かない? レジェンド高瀬昌弘監督が語っていた“ラグビーの扱いやすさ”とは
text by
高木圭介Keisuke Takagi
photograph byKyodo News
posted2021/01/09 11:00
全国初制覇に涙する『スクール・ウォーズ』のモデルになった伏見工業。ドラマ制作陣にとってもラグビーはうってつけの素材だったようだ
15年ほど前、この『青春とはなんだ』をはじめ、シリーズで監督を続け、他にも『太陽にほえろ!』や『鬼平犯科帳』などなど、数々のドラマでメガホンを取り続けたTVドラマ界のレジェンド・高瀬昌弘監督(2019年12月に88歳で死去)にインタビューさせていただく機会があり、その時にいろいろと質問させていただいたのだが、このドラマで「ラグビーの扱いやすさ」に気づいてしまった制作陣は、当然のように次作でもラグビーの採用を訴えたのだそうだ。
しかし、昭和41年11月からスタートした竜雷太主演の次作『これが青春だ』ではサッカーが採用される。これは日本テレビが当時から高校サッカーを応援しているという「オトナの事情」による上層部の決定だったとか。
サッカー採用は、ラグビーとは真逆で、制作陣にとって困ったものだった。何しろ「俳優の顔とボールが同じ画面に入りづらい」「俳優が走っているシーンも、ボールを扱うと素人であることがバレバレ」「試合シーンに間が入れづらい」などなど。まだ制作側にも視聴者側にもサッカーの知識が乏しい時代とあって、サッカーならではのフォーメーションプレーなどの描写はほぼない。キーパー以外のサッカー部員は全員で走り回り、鍛錬もひたすらランニングとウサギ跳び、特訓は「100本シュート」という大雑把なモノだった。
躍進のメキシコ五輪を境に……
かくして日本テレビの学園青春ドラマは、3作目『でっかい青春』(昭和42年~)でラグビー、4作目『進め!青春』(昭和43年)でサッカーと、制作側とテレビ局側の意見を順番に取り入れつつ、日曜夜8時の人気シリーズとして続いていくことになる。
テレビ局側の意見を取り入れ、サッカーを採用した『進め!青春』はシリーズ初のカラー作品。高瀬監督、主演俳優として初めて主題歌と挿入歌を歌唱した“ナポレオン先生”こと浜畑賢吉(当時、劇団四季)以下、スタッフも大いに意気込んだそうだが、第1回放送(昭和43年10月20日)がメキシコ五輪のバレーボール中継(NHK)とバッティングしてしまい視聴率が低迷(それでも11%台なのだが)。第1回放送後に早々に打ち切り決定という不運に見舞われる。
メキシコ五輪は、銅メダル獲得の日本サッカーを大いに躍進させた一方で、逆にサッカーを題材としたドラマを打ち切り(全11話)に追い込み、しかもシリーズその物まで終了させてしまう皮肉な結果をもたらした……。