濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
武尊vs那須川天心は実現なるか 「自分より強いって言われてるヤツがいるのが許せない」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2021/01/06 17:02
この5年間熱望され続けている那須川天心と武尊の試合は、果たして実現するのだろうか
武尊のコメント時、背景の幕が外された
その上で、インタビュースペースの模様替えがあった。大会名やスポンサーのロゴが入った背景の幕が、武尊のコメント時だけ外されたのだ。武尊はこの大晦日大会とは直接の関係がない、RIZINと契約したわけではないということを示すためだろう。
そうした細かい部分にも配慮がなされており、また見逃せないのはK-1関係者が彼に付き添っていたこと。つまり皇治のようなRIZIN“移籍”ではないということだ。
「片方(の団体)を脱退して片方に行くというやり方はしたくなかった。そのことで片方の団体が落ちてしまうので。この試合をやるにあたって誰かが落ちたり傷ついたりするものにしてはいけないと。どうにか格闘技界が1つになるような試合ができることを思ってずっと動いてきたつもりだったので。
どこかを落としてやる試合にはしたくない。K-1で闘ってる後輩たちを裏切ることはできない。この試合をやるには中立なリングで。僕はK-1のチャンピオンとして、天心選手はRISE、RIZINのチャンピオンとして、格闘技界を1つにするための試合にしないといけないと思ってるので。理想の形はK-1でもRIZINでもない中立なリングを作って、そこでやりたいと思います」
那須川と対戦する舞台について、武尊はそう語っている。武尊がK-1、那須川がRISEの選手だからRIZINでやればいい、という話ではないようだ。実際、RIZINはRISEと並ぶ那須川のもう一つのホームリング。RIZINの榊原信行CEOも「RIZINでやらなくてもいい」とコメントしている。
数年前、武尊に駆け寄り拳を差し出した天心
武尊と那須川がリングサイドで拳を合わせたシーンは、数年前の光景を思い起こさせた。場所はK-1の代々木第二体育館大会。試合を観戦した那須川は退場していく武尊に駆け寄り、拳を差し出してタッチ。それが対戦の約束だと彼は信じた。
しかしK-1サイドは正式交渉外のゲリラ的アピールとして態度を硬化させた。K-1が那須川に求めたのは独占出場契約だ。だがそれは那須川と彼の主戦場RISEには到底、認められないことだった。RIZINでの那須川のマイクアピールに対し、K-1が訴訟を起こしたこともある。絶縁、あるいは泥沼。そういう状態だった。
だがそんな中でも武尊は「みんなが見たいカードを必ず実現させます」と言い続けてきた。那須川に対戦要求された当初は「闘いたいならK-1に上がってきてほしい」と団体の意向と同じコメントをしていたのだが。