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「蝶野(正洋)さんこちらからは以上です」“面白すぎる”楽天・島内宏明が選んだ『2020年マイベスト名言』
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2020/12/29 17:04
2011年ドラフト6位で楽天入りした島内宏明。今季チーム4位の53打点をマーク
そうか。そうだったのか。
島内のコメント。それは、フォア・ザ・チームも表しているのではないか。
表現方法がファンタスティックかつユーモラスかつ変幻自在だから、単に「面白すぎる」で片づけてしまいがちだ。しかし、1つひとつの言葉を丁寧に拾い上げると、自虐的に受け取れる内容も、もがき、苦しむ、心の叫びのような気がしてならない。それは、ノミネート作品以外のコメントにも言えることだ。
調子がよくない。ただ、そんな時にこそ、チームメートが助けてくれる。
自分がいつも支えられているのだと実感できるから、試合になればバットに想いを乗せ、ボールを打ち抜く。そして、快音を響かせられれば、球団配信コメントで感謝の気持ちを言霊に宿しつつも笑いに転換し、ファンやチームに届ける。島内のコメントには、人間味とサービス精神がにじみ出ているのだ。
実に、素晴らしい。楽天、いいチームだ。
こんなバックグラウンドを聞かされたら、もう、決まりではないか。
――「コメント・オブ・ザ・イヤー」グランプリは、7月18日でよろしいですね?
「面白いのは吉持ですけど、自分のなかでは岸さんと直人さんのおかげで打てた時のほうが心に残ってますね。コメントを見ただけではわからない人もいると思いますけどね。こんな感じで大丈夫ですか?」
はい。大丈夫です。いただきました。
「来年はコメントしないと思います、ふふふ」
では改めて、結果発表です。
【グランプリ】
7月18日 西武戦 1回に松本航から本塁打
「打ったのはストレートです。岸さん、直人さん、そして蝶野さんこちらからは以上です」(真剣な表情で)
【準グランプリ】
9月6日 オリックス戦 1回に張奕からタイムリー
「打ったのはフォーク。DHでなかなか出ることがないので、正直どう挑めばいいかわからないです。最近、調子が上がってこないので吉持に電話したんですが、『あまり考えすぎるな』と言われました。吉持打法です」(真顔で)
※球団配信コメントは原文のママで掲載しています
――こんなむちゃぶり企画を受けていただき、誠にありがとうございました。
「いやぁ、自分で選ぶのって大変ですね」
――最後に、島内選手のコメントの素晴らしさを世に広めてくれた楽天ファン、マスコミのみなさんに、ひと言お願いします。
「来年はコメントしないと思います。今のところはね、ふふふふ」
――え?
「……(真顔で頷く)」
ファンのみなさん、マスコミのみなさん、こちらからは以上です。
(【前回を読む】「見てるか!お母さん」プロ野球界イチ(?)フリーダムすぎる楽天・島内宏明の“面白コメント8選” へ)