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「最終目標はPFP1位」無敗の3階級王者・田中恒成が明かす、井上尚弥の“本当の凄さ”
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHatanaka Boxing Gym Andre
posted2020/12/30 11:08
4階級制覇王者で現WBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(Ambition)との対戦が目前に迫る田中恒成
誰も無視できないエリートボクサーへ
しばらく考えた末に挙げた「パウンド・フォー・パウンド(PFP)1位」は、実際には田中の頭に普段からある目標ではなかったのだろう。ただ、そう述べたことの背景にあるのは「もっと評価されたい」という素直な思い。3階級制覇という偉業を成し遂げながら、日本国内では影の薄い存在であり続けた男の反骨心とプライドがそこに滲んだ。
現在の田中にとって、心の底から欲しいのは4階級制覇という勲章よりも実力、存在への正当な評価。そんな渇望が、田中の言葉の節々から伝わってくる。
アメリカでの田中の評価は決して低くはない。筆者がランキング選定委員を務めるリングマガジンのPFPランキングでも、トップ10当落線上の選手の話になったとき、田中の名が引き合いに出されることがある。
最近では10月にテオフィモ・ロペス(アメリカ)が当時PFP2位だったワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)を下す殊勲の星を挙げた際も、「ロペスより田中とWBA、IBF世界スーパーライト級王者のジョシュ・テイラー(英国)の方がトップ10に入るべきだと思う」という意見が出ていたほど。
欧米でも名前の通った井岡との対戦を制せば、その内容次第でトップ10入りが改めて検討される可能性は高い。そして、来年中にも実現可能なエストラーダ対ゴンサレス戦の勝者との対戦にも勝てば、田中はもう誰も無視できないエリートボクサーと目されるはずである。
そんなシナリオを現実のものとすべく、井岡戦はもちろん負けられない一戦である。
いわばスーパーフライ級戦線の“準決勝・第1試合”。この試合を「転機」と呼んだ田中にとって、リスペクトを求める新たな戦いが始まろうとしている。
#1 直前インタビュー 15戦全勝の俊才・田中恒成が語る「(井岡とは)目指しているところが全然違う」
写真=Hatanaka Boxing Gym Andre