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井岡一翔「メリットのない試合」、田中恒成「キャリア最大の勝負」…大晦日“史上最高の日本人対決”の行方
 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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posted2020/12/30 17:09

井岡一翔「メリットのない試合」、田中恒成「キャリア最大の勝負」…大晦日“史上最高の日本人対決”の行方<Number Web> photograph by Getty Images

昨年の大晦日、父になって初の防衛に成功した井岡一翔

井岡「この試合はビッグマッチだと思っていない」

 そんな周囲の興奮をよそに、クールな言葉を吐き続けているのが井岡だ。24日に開かれたオンライン記者会見では「この試合はビッグマッチとも注目のカードだとも思っていない」とバッサリ。長くトップに君臨し、TBSボクシング中継の看板を背負ってきた井岡にとって田中は遥か後方の存在というわけだ。

 そもそも井岡は田中戦を望んでいなかった。17年大みそかに引退を発表し、翌秋に復帰した井岡が掲げた目標は4階級制覇と海外の大舞台でビッグネームと対戦するというもの。4階級制覇は19年に達成し、次なるターゲットはビッグネームとの対戦だ。現在はWBC王者のフアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)とWBAスーパー王者のローマン・ゴンサレス(帝拳=ニカラグア)を標的に掲げている。

 ところがコトは思うように進まない。エストラーダ、ゴンサレスともに現時点では井岡のほうを向いておらず、一方でWBOは井岡に対して田中との指名試合を厳しく指令。新型コロナウイルスの影響もあって外国人選手との対戦が見通せない中、井岡は「僕にとってメリットのない試合」とまで言い切る田中戦を受けるしかなくなったというわけだ。

田中にとってはビッグチャンスの到来

 逆に田中にとって今回の試合は「オレにとってキャリア最大の勝負だと思っている」と語るように、メリットが大アリということになる。名古屋を拠点とする田中は数々の記録を打ち立てながら、全国区になれずに苦労してきた。実力相応の評価を得ていないというストレスを少なからず感じている。ビッグネームの井岡を踏み台にスターダムにのし上がる。ビッグチャンス到来に田中は舌なめずりをしているのだ。

 さあ、肝心の試合はどうなるのか。両者はともに近い距離でも、遠い距離でもファイトできるオールラウンダータイプであり、井岡はディフェンス技術に優れ、緻密にボクシングを組み立てるスタイルで玄人をうならせてきた。田中の武器はなんといってもハンドスピードとフットワークの速さ。波があるのが若さと言えるが、潜在能力の高さはピカイチだ。

【次ページ】 「格の違いをどの部分で戦っても見せられる」

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