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「男子みたいなフェンシングだって言われますが」五輪でメダル目指す19歳、上野優佳が掲げる理想像
posted2020/12/28 06:00
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Ichisei Hiramatsu
冷静沈着な試合運びに加え、素早い剣さばき。ピストに立つ姿は実に堂々としていて、緊張とは無縁のようにも見える。
「周りからは“あまり緊張しないでしょ”ってよく言われるんですが、けっこう緊張するタイプなんです。ただ、ピストに立つと、“何をしようかな”と、勝利に対して考えることの方が頭の中をしめていて、緊張はしているのかもしれないですけど、あまり感じていないかもしれませんね」
若手の成長が著しいフェンシング日本女子フルーレ。19歳の上野優佳は、現在、日本女子フルーレ勢最上位となる世界ランク7位で、東京五輪の日本代表入りが確実視されている。
上野は両親も競技経験があり、兄も競技に取り組むフェンシング一家で育ち、幼い頃から英才教育を受けてきた。
2008年には地元大分県で国体が行われ、その年の北京五輪男子フルーレ個人で日本選手初のメダルを獲得した太田雄貴(現日本フェンシング協会会長)の姿を間近で感じた。
「当時はまだ自分にとってオリンピックは目標というよりも夢という感じでしたね」
本格的に競技を始めたのは翌年。小学2年生になった上野は本格的に父の指導を受けるようなり、小学生の頃から出場した数々の大会で優勝した。
シニアになると予選からこんなにもきついものなのか
2015年に中学2年生で初めて出場した全日本選手権は今も深く記憶に残っている。
予選を勝ち上がり、決勝トーナメントに進むと、2回戦でロンドン、リオと2度のオリンピックに出場した西岡詩穂と対戦。この大会が「大人の選手と対戦するのは初めてだった」が、「緊張よりも楽しみの方が大きかった」という。
「当時はまだシニアの選手のことをそんなに知らなくて、父から相手は強い選手だと伝えられました。そして“楽しんでこい”と」
試合は経験豊富な西岡に「コテンパにやられました」と振り返る。
「本当に試合中、何もできなかったんです。できなかったというより、何もやらせてもらえなかった。そのとき、“いつかこの選手に絶対に勝ちたい”という気持ちが芽生えましたね」
中学3年生になるとシニアの国際大会にも出場するようになった。
「ジュニアやカデのカテゴリの試合なら普通に予選は突破できるのに、シニアになると予選からこんなにもきついものなのか」とシニアの壁の厚さを痛感した。