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「男子みたいなフェンシングだって言われますが」五輪でメダル目指す19歳、上野優佳が掲げる理想像
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2020/12/28 06:00
フェンシングで東京、パリ、さらにその先を見据える上野優佳
これからはシニアで戦っていかなければ
高校に進学するタイミングでナショナルチームの関係者から、味の素ナショナルトレーニングセンターに近い場所へ環境を移すこともすすめられた。悩んだ末に、当時兄が在籍していた地元の別府翔青高へ進学したが、2年生に進級するタイミングで星槎国際高への転校を決意し、上京した。
さらに実力を伸ばした上野は、2018年、高校2年時に出場した世代別の世界選手権で、カデ(13歳以上17歳以下)とジュニア(17歳以上20歳以下)両クラス優勝の快挙を達成。さらにユース五輪でも金メダルを獲得した。この経験が自信につながった。
「下のカテゴリで勝てた手応えと、これからはシニアで戦っていかなければという気持ちがさらに強くなった大会になりました。東京五輪や、2024年パリ五輪もあらためて視野に入れるようになったと思います。そういった意味ではこのU20、U17世界選手権での優勝やユース五輪での金メダル獲得は、私にとってターニングポイントの一つになったと思います」
幼い頃から磨き上げたフェンシング技術。2歳年上の兄と日々実戦練習で剣を交え、女子選手屈指といわれるスピードも手に入れた。
よく男子みたいなフェンシングと言われますが
「よく男子みたいなフェンシングだって言われますが、速い動きからのアタックやディフェンスは得意としているところです。男子選手のように前後に激しく動いて、そこから勝負を仕掛けるのが自分らしさ」と、上背や手の長さで勝る世界の強者たちにも引けを取らない戦いを繰り広げている。
理想はフルーレで個人、団体あわせてオリンピックで6つの金メダルを獲得している、フェンシング大国イタリアのレジェンド、バレンチナ・ベッツァーリだ。
「実際に試合を見たことはないのですが、試合の映像などを見ると、身長はそんなに高くないのに動きは激しくて、剣もぜんぜん当たり負けしないんです。ちょっと自分のスタイルに似ているところがあるのかなと思っていて。なによりもオリンピックで結果を残しているので……やっぱり、こういう選手になりたいですね」
東京五輪でのメダル獲得はもちろん、22歳で迎えるパリ、さらにその先も見据えている。
「海外には力の強い選手がたくさんいるので、今は接触したときに力負けしないような剣さばきを意識して練習しています。24年の五輪で確実にメダルを獲るためにも、東京を経験することは絶対に必要。挑戦者の気持ちで積極的に挑んでいきたいです」
上野優佳Yuka Ueno
2001年11月28日、大分県生まれ。小2で本格的にフェンシングを始める。中2で全日本選手権初出場。'19年アジア選手権では団体戦で優勝、個人戦では2位に。今年4月に、星槎国際高川口から中大へ進学した。159cm。