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渡邊雄太の価値ある2ウェイ契約 ラプターズ首脳陣が評価する「小さなこと」と「3P最低40%」の覚悟
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2020/12/24 11:01
渡邊はキャンプを通じて、下部GリーグとNBAを一定期間行き来できる立場を勝ち取り、3シーズン目もNBAでプレーが可能となった
評価された「小さなこと」
「彼はオールラウンドな選手だ。とてもよくバスケットボールを教えられてきた選手で、どうプレーしたらいいかをよくわかっている。正しいことをやる。(キャンプが始まってからの)短い5日間で、私たちがシステムのなかで彼にどういうプレーをしてほしいかをよく学んでいる。
オフェンスを動かし続ける選手だ。必ずしもスコアラーとしてというわけではないけれど、ボールがまわるようにし続ける。ハードにカットする(ペイント内に切れ込む)し、フロアのスペースを整えることができる。
ディフェンス面ではハードワーカーだ。シュートに対するチャレンジや、ボールに対するプレッシャー、私たちのコンセプトやスキームをよく理解している。とてもいいユーティリティタイプの選手だ。私たちのシステムにおいて、そういったことは長所となる」
このコメントだけでも、ナースHCが渡邊の選手としての持ち味をよく理解し、その上で期待していることがわかる。試合全体を見ることができ、チームのゲームプランを理解し、スタッツに表れないような小さなプレーでも手を抜くことなく、その時々で常にチームにとって必要なプレーができるのが渡邊の長所なのだが、見る人によってはスタッツの物足りなさで片付けられてしまうことがある。しかし、ラプターズではコート上で渡邊がやっている「小さなこと」を評価している。
別のときに、アシスタントコーチのジャマ・マラレラも、渡邊についてこう語っていた。
「彼はシュートがとてもうまい。スタッツに出ている以上だ。一番重要なことは、彼はバスケットボールを正しいやり方でプレーしていることだ。私たちがやってほしいようなやり方でディフェンスしている」
「最低40%以上」と言い切る渡邊
もっとも、だからといってスタッツがどうでもいいわけではない。特に3Pシュートの成功率は重要だ。3Pシュートを決められない選手がいると、ディフェンスが下がって中を固められてしまい、フロアバランスが悪くなる。どれだけスタッツに表れないところでいいプレーができていても、必要な場面で3Pシュートを決められない選手はコーチとしては使いにくいというのは、この数年のNBAの常識になってきている。
渡邊も3Pシュートの重要性はよく理解しており、キャンプ前から「NBAに入るためには3Pシュートを最低40%以上決めなくてはいけない」と言っていた。これは、かなり高い基準だ。昨シーズンのNBAで、3Pシュートを規定数以上打ち、40%以上決めていたのは28人だけ。渡邊のGリーグでの3P成功率は2年前より昨季のほうが向上しているが、それでも36.4%だった。
それだけ高い基準にも関わらず、「最低40%」と言い切るところに、彼なりの自信と覚悟が感じられた。
昔から人一倍シュート練習をしてきたという自負。シュートを自分の武器にできないと、NBAという高いレベルに食い込むことはできないという覚悟。
「今、本当に自信を持って打てていると思いますし、チームのなかでほかの部分でも色々評価してもらえている分、より落ち着いてシュートが打てているところはあると思います。今シーズンは、今まで以上に高確率で決めていきたいですし、決めなければ自分がここの世界で生き残っていく道はないと思っています」