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「僕ってこういう性格だったんだ」ウエンツ瑛士は、なぜイギリスで“本当の自分”を見つけられたのか
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byShigeki Yamamoto
posted2020/12/22 11:03
俳優でタレントのウエンツ瑛士さん
大きな進歩はないけれど、毎日いろいろ学んでいるんだと思えるようになったし、休む時は休んでもいい、誰かと飲みに行ってもいいじゃないかって。そう思ったら、自然と言葉も入ってくるようになったんです。気持ちひとつでこんなに違うし、何よりバランスが大事だと思えた。レッスンに行くだけが、自分が伸びる材料じゃないんだなって。
――それ以前はレッスンを休むことへの罪悪感があったんですね。
ウエンツ すごくありました。学びに来ているのに、飲みに行って大丈夫? みたいな。自分で決めて、修行に来たわけだけど、「お休みを頂いて、来させてもらっている」みたいな感覚はぬぐえなかったんです。
イギリス留学で見つけた“仮面を外したウエンツ瑛士”
――ロンドンで暮らすウエンツ瑛士に何か発見はありましたか?
ウエンツ 一番は「僕ってこういう性格だったんだ」という意外な発見ですね。結局、30年間、芸能人である“ウエンツ瑛士”という仮面を一切、脱げなかったんだと思い知った。
――“ウエンツ瑛士”という仮面?
ウエンツ これまで自分がどんな思いをしているかではなくて、どう見られているかが一番大事という生活でした。外へ出れば、視線を感じるし、声もかけてもらえる。たとえば、腰が痛くても、道ばたで座りこんだりはしないし、できない。だけど、ロンドンではそういう仮面が自然と剥がれていくのを感じました。
「自分はこういうことがしたかったのか」「こんなふうに思うのか」とか、自分のことなのに、驚くことばかりで……。たとえば、面白そうだな~と思う人とすれ違っても、これまでの僕なら絶対に声なんてかけなかったと思うんです。だけどイギリスでは、自然に「元気?」って声をかけている自分がいる。「あぁ、僕はしゃべりたい人だったんだ」と。
――自分の知らない“ウエンツ瑛士”は、面白い人間でしたか?
ウエンツ 思っていたよりも、面白かったですね。日本だったら、ちょっと頭おかしいと思われるかもしれない(笑)。あと、やっぱり自分には外国人の血が流れているんだと実感しました。
――それは、ロンドンでの生活が楽だったから?
ウエンツ それもあるんですけど。向こうでは至るところでキスしているカップルがいて、それに対して僕は「恥ずかしい」ってコメントするタイプだったんです。でも、ロンドンでそういうカップルを見ても、「そっか、今そういう気分なんだね」と恥ずかしさもなく、普通に受け入れられて。
――それは真逆な反応ですね。
ウエンツ 驚きました。あ、俺、本当は恥ずかしいと思っていなかったんだなと。他人の目を意識しましょうという文化で育ったから「恥ずかしい」と感じていたんだなって、気づかされたんです。これが本当の自分なのかと。
――“本当の自分”。これまで私たちが見てきたウエンツ瑛士は“偽物”なんでしょうか?