オリンピックPRESSBACK NUMBER
「もうダメだ…」挫折した神童に「自分で考えろ!」 テコンドー五輪代表3人“大東文化大テンション”
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySachiko Hotaka
posted2020/12/08 11:01
兄の鈴木セルヒオ(左)と弟の鈴木リカルド(右)、そして山田美諭。テコンドー日本代表の4人中3人が大東文化大で学んだ
2LDKで同居しながら兄弟でトレーニング
セルヒオや山田とは対照的に、来日3年目のリカルドは順風満帆に代表の座を勝ち取った感がある。
「最初から兄がパートナーでやってくれたことが大きい。兄は韓国で頑張って得た知識を家でも道場でもアドバイスしてくれますからね」
セルヒオはやさしい視線をリカルドに送りながら呟いた。
「そうなんですよ。弟は僕の、いいとこ取りですから」
鈴木兄弟は、山田が驚くほど仲がいい。現在は大学と第2の練習の拠点である味の素ナショナルトレーニングセンターのどちらにも近い2LDKに同居しているが、緊急事態宣言によって自宅に籠もっている時でもケンカらしいケンカは皆無だったという。
「緊急事態宣言が発令されてから2カ月ほど自宅の寝室の家具をリビングに移動させ、トレーニングルームにしてふたりで軽くスパーリングをやっていました。ただ場所は狭いし音も出るので、隣に住む人に『うるさかったらすいません』と挨拶に行きましたね」
一方、山田は東京で練習できなくなったときには愛知県に戻り、父が経営する空手道場で汗を流した。道場には実兄で2014年のアジア大会のテコンドーで銅メダルを獲得した山田勇磨がいる。コロナ禍でも兄弟や親子で練習できたりする環境だと練習不足にならない。
「よそよそしくなる代表合宿でも最近は」
12月上旬から味の素ナショナルトレーニングセンターで日本代表を招集しての強化合宿が始まった。代表合宿でもホームである大学での練習同様、声が出てしまうのかと聞くと、セルヒオはニッコリと笑いながら口を開いた。
「代表合宿に行くとちょっとよそよそしくなってしまうところもあるけど、最近は少し出るようになったと思います」
コロナ禍でも、譲れないものがある。