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日本一4連覇のホークスを倒したければ…メジャーリーガーではなく「編成のスーパースター」を獲得せよ! 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2020/12/07 06:00

日本一4連覇のホークスを倒したければ…メジャーリーガーではなく「編成のスーパースター」を獲得せよ!<Number Web> photograph by Getty Images

現地11月17日にシカゴ・カブスの「編成トップ」を退任したばかりのセオ・エプスタイン氏

まさに“神すぎる”偉業エピソード

 エプスタイン氏が「編成トップ」のスーパースターになったのは、レッドソックスとカブスでの成功=ワールドシリーズ優勝あってのことだが、そこに至るまでのプロセスが「神すぎる」。 

(1)粗削りな打撃と守備の下手な一塁手として他球団から見限られたデイビッド・オルティスを獲得。同選手は後に「史上最高の指名打者」と呼ばれる名選手になる。

 

(2)目立った成績を残していなかった中堅のビル・ミラー内野手を獲得。同選手は2003年の首位打者になり、翌年の優勝にも貢献した。

 

(3)NPBの中日入りが内定していたケビン・ミラー一塁手(当時マーリンズ)を(ルールに則って)「強奪」。マイナーリーグで71試合連続出塁記録を打ち立てた「出塁マシーン」は2004年のア・リーグ優勝決定シリーズで0勝3敗から「奇跡の4連勝」を果たす最初のきっかけ=「四球」を、宿敵ヤンキースの守護神マリアノ・リベラ投手からもぎ取っている。

 

(4)他球団で「イマイチ」だった無名監督=テリー・フランコーナ(現インディアンス)を複数の有力な候補者の中から抜擢。エプスタイン流チーム構築法を理解した同監督は、通算1702勝(1434敗)の名将になった。

 

(5)2001年のダイヤモンドバックス優勝の立役者カート・シリング投手を粘り強い交渉の末に1対4のトレードで獲得。レッドソックスで2度の優勝を成し遂げる「中心選手」に据えた。

 

(6)「人間扇風機」のマーク・ベルホーン内野手を控え内野手として獲得。同選手は2004年のア・リーグ優勝決定シリーズ第6戦と7戦、ワールドシリーズ初戦で3試合連続の本塁打を放った。

 

(7)アンソニー・リゾ一塁手(チームリーダー)、カイル・ヘンドリクス投手(主戦投手)、ジェイク・アリエッタ投手(現フィリーズ、後にサイ・ヤング賞投手となる)らを若手時代にトレードで獲得。カブス優勝の原動力とした。

 もちろん、エプスタイン氏が指揮したドラフトやトレードには失敗例もあるし、NPBとMLBではドラフト制度もFAも構造が随分と違うので、能力を発揮できない可能性はある。だが、例えば選手にとってあまり有利ではない日本のFA制度や年俸調停制度は「大きな武器」となるはずで、彼が「今そこにある現実」を踏まえた上でNPBにおいて有効なチーム構築法を探り当てる可能性は高いのではないか。

【次ページ】 外国人監督がいるなら、編成トップも不思議じゃない

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