情熱のセカンドキャリアBACK NUMBER

クリケット世界最高峰を目指す40歳元プロ野球選手が“コロナでピンチ”でも情熱を持ち続けられるワケ 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2020/11/25 17:01

クリケット世界最高峰を目指す40歳元プロ野球選手が“コロナでピンチ”でも情熱を持ち続けられるワケ<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

現在は「ワイヴァーンズクリケットクラブ」でプレーしている木村

野球仕込みの守備を信頼されている

 日本では7月から試合ができるようになった。実戦を積み重ねていくとともに、登録メンバーに入っているシンハラともコンタクトを常に取ってきた。当初は11月にスリランカに渡る計画を立てていたが、コロナ禍の影響で外国人選手の出場が見送りになっている状況が続いているために取り止めた。

「時間が止まってくれるわけじゃない。40歳になったし、この状況は遠回り。プラスに捉えたくても難しいですよ」

 焦りがときどき顔を出してくる。だがそのたびに「今やれることをやる」で必死に抑え込んできた。

 2021年、再びスリランカに渡ったときに、いいプレーができるように準備していくしかなかった。シーズン最後の公式戦となった11月のジャパンカップ西関東大会優勝は、自分の取り組みに間違いがなかったという証明にもなった。

 シンハラも木村がスリランカにやってくることを心待ちにしてくれているという。

 クリケットの後進国である日本の、キャリアが浅く、かつ40歳の木村を受け入れるメリットは何なのか――。

 木村がシンハラから信頼を受けているのは上達度や姿勢もさることながら、彼の野球仕込みの守備だ。

 クリケットでは素手でボールを取らなければならない守備についてあまりフォーカスされてこなかった歴史があるものの、近年はメジャーリーグの守備コーチがオーストラリア代表を指導するなど見直されてきている。

 木村も実際、シンハラで守備の技術指導役を買って出ていて、一軍の選手に対してもアドバイスを行なっている。守備力を買われて、試合のメンバーに入る可能性は少なからずある。

 シンハラには木村が目指す「インディアン・プレミアリーグ」(IPL)でプレーする選手もいる。昨季優勝したムンバイ・インディアンスのヘッドコーチがシンハラでもコーチに就任した。最初で最後のビッグチャンスが2021年に訪れるかもしれない。

「今やれること」を突破口に

 プロ野球の世界でもそうだった。

 横浜ベイスターズから1対2のトレードで広島カープに渡り、代走と守備固めから出場機会を増やしてレギュラーを勝ち取った。「今やれること」が突破口になった。

「スリランカに行くメドは立っていません。でも行けると信じています。シンハラでプレーしたいという気持ちは強いです。時間は限られているし、(IPLでプレーできる)可能性は大きくないのかもしれません。でもクリケットを日本に広めていくためにもできる限り頑張りたい」

 ベイスターズ、カープで背負った66には、「はい上がり」の決意が込められていた。

 ここワイヴァーンズでも66を心にも刻む。

 いざIPLへ、パッションを燃やして。

 40歳のクリケッターに惑いはない。

前編は下の「関連記事」からもご覧になれます)

関連記事

BACK 1 2 3 4
木村昇吾

他競技の前後の記事

ページトップ