情熱のセカンドキャリアBACK NUMBER
クリケット世界最高峰を目指す40歳元プロ野球選手が“コロナでピンチ”でも情熱を持ち続けられるワケ
posted2020/11/25 17:01
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
今やれることを、ただただやるしかない。
世界最高峰と称される「インディアン・プレミアリーグ」(IPL)でプレーするという目標を、コロナ禍によって断ち切られたくはない。スリランカから帰国した木村昇吾は家族との再会を喜ぶとともに、いかなる状況であっても前に力強く踏み出していくことを決意する。
4月に緊急事態宣言が発令されてからは自宅でトレーニングを続けた。小さな庭で素振りをするだけではなく、家族にボールを投げてもらってバットに当てる感覚を忘れないようにした。ウエイトトレーニングはゴムチューブで代用した。早朝や深夜の人のいない時間帯を選んで走るようにした。
孤独な挑戦ではなかった。
プロ野球時代と明らかに変わったこととは?
家族も戦ってくれた。そして所属する「ワイヴァーンズクリケットクラブ」や日本代表のクリケット仲間たちがいた。
彼はしみじみとこう振り返る。
「クリケットがしたくてウズウズしていたのは僕だけじゃなかった(笑)。日本代表のみんなともグループLINEのなかで、きょうはロング、明日はスプリントみたいにみんなで走るメニューを決めたりして。1人で鼓舞していくというなら難しかったけど、みんなで励まし合いながらやれたのは良かったと思います」
年長者の木村が鼓舞していくだけでなく、周りからも鼓舞された。気持ちが切れることはなかったという。
プロ野球時代と明らかに変わったことがある。
インド、オーストラリア、スリランカなどに単身でクリケット修行に赴き、海外での生活や交流によって一気に世界が広がった。今までになかった角度から物事を見られるようになった。コロナ禍によって自分と向き合う時間が増えたことで、「自分がクリケットをやっている(社会的)意義」を考えるようにもなった。