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なぜ試合に出られない、公式記録にも残らない「馬付き」を選んだのか 懸命な女子大生の姿を追う
text by
中西祐介Yusuke Nakanishi
photograph byYusuke Nakanishi
posted2020/11/14 06:00
日本大学馬術部の堀坂七菜子(左、2年)。4年名倉賢人とオリンピックホースでもある桜望をサポートしている
ウィニングランで先頭を走る風景が見える
2020年11月、コロナ禍で開催が危ぶまれていた全日本学生馬術三大大会が関係者の尽力もあり無事に開催された。本大会は大学4年生にとって最大の目標であり、日本大学馬術部には3種目総合10連覇がかかる。そして堀坂が名倉&桜望と戦う最後の大舞台でもある。
試合前、彼女に試合場ではどんな風景が見えているのかと質問してみるとこんな答えが返ってきた。
「私は桜望の馬付きをしている時、演技前、走行前からいつもウィニングランで先頭を走っている風景が頭の中に見えています。それだけこの人馬には期待と信頼を寄せています」
出番直前に待機馬場に現れた人馬の横にはチームの赤いジャケットを着た「馬付き」の姿があった。その表情には頼もしさと優しさが同居していたように思う。それはこれまでに人馬と過ごした時間が与えてくれたものだろう。
名倉&桜望は2種目に出場し、障害馬術競技3位、総合馬術競技2位という成績を残して3種目総合10連覇に大きく貢献した。
最終競技が終了し、待機馬場に戻ってきた直後彼女は人馬を讃えるように涙を流しながら馬を撫で続けた。
その姿は「馬付き」という記録に残らない第三の選手がこの場にいたことを証明していた。