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なぜ試合に出られない、公式記録にも残らない「馬付き」を選んだのか 懸命な女子大生の姿を追う

posted2020/11/14 06:00

 
なぜ試合に出られない、公式記録にも残らない「馬付き」を選んだのか 懸命な女子大生の姿を追う<Number Web> photograph by Yusuke Nakanishi

日本大学馬術部の堀坂七菜子(左、2年)。4年名倉賢人とオリンピックホースでもある桜望をサポートしている

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中西祐介

中西祐介Yusuke Nakanishi

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Yusuke Nakanishi

「記録に残らない第3の選手」

 馬術競技は、ライダーと馬の2つの存在が合わさることで1人のアスリートになると言われるが、人馬の横には公式記録に残らない「馬付き」という存在がいるのをご存知だろうか。英語では「グルーム」と呼ばれ、馬の世話を中心に行いながら人馬のパフォーマンスを支える馬術競技には欠かすことの出来ないメンバーがいる。

 馬術競技といえば人馬が颯爽と障害物を飛び、クロスカントリーコースを豪快に駆け抜けていくという表の華やかな一面がイメージとして拡散されている。しかしその裏では馬のケアを行い、人馬を陰で支える彼らの存在がある。

人馬のために「とにかく一生懸命」に働く

 2020年8月、筆者は学生馬術の取材で山梨県馬術競技場を訪れた。今年はコロナ禍の影響で満足に練習が出来なかったり、活動を休止せざるをえない状況にある大学馬術部が多く、ようやく活動が再開したことへの喜びと不安が入り混じった少々重たい感情が漂っていた。

 そんな中でキビキビと競技場内を動き回る1人の女子部員に目に止まった。彼女は馬術の強豪で知られる日本大学馬術部の堀坂七菜子という2年生部員だった。競技後の馬のケアを行い、細かくメモを取る姿は「とにかく一生懸命」という言葉がピッタリだった。話を聞いてみると彼女は試合に臨むレギュラー馬の「馬付き」を任されているという。競技後のケアはもちろん馬の日々の調子を記録し、人馬のために何ができるのかを考えて実行するのが自分の役目だと話す。

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