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【ソフトバンク優勝】「君にホークスの19番を…」初の“胴上げ捕手”甲斐拓也が胸に秘めるノムさんの言葉
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2020/10/28 17:01
10月27日のロッテ戦で勝利し、守護神・森唯斗のもとへ駆け寄った甲斐拓也
「苦しかったです」
気づけばマリーンズを大差で引き離したペナントレースだが、10月9日の時点ではゲーム差0の勝率1厘差まで迫られる大接戦だった。しかし、ホークスはその翌日から12連勝を果たして、一気に優勝へと突っ走った。その間、甲斐は1人でずっとマスクを被り続けた。12日に高谷が膝の具合が悪く登録を抹消されたためだ。チームが正念場の中で、守りの要としての役割を全うしてチームの勝利に貢献し続けた。それは今後の野球人生にもつながる財産だ。
ずっと、ずっと頑張ってきた甲斐に野球の女神がほほ笑んだのだろう。優勝を決めた10月27日の試合では会心の10号2ラン本塁打を含む3打点とバットでも活躍した。
「本当に今までにない瞬間でした。何とか1点欲しいと思った中で打てて。ベースを一周して戻ってきたら、先輩を含めてみんながベンチの前に立って迎えてくれた。あー、これがホークスのチームメイトなんだと。あの瞬間は本当に嬉しかった」
そして午後9時19分。ゲームセットの瞬間、甲斐は右手を突き上げた。マスクを放り投げて、駆け足で守護神の森唯斗のもとへ。森が巨体を預けてきたが、それをしっかりと受け止めて抱き合った。
勝者のフィナーレはいつだって美しいが、この日の甲斐はとびっきり輝いて見えた。
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