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【ソフトバンク優勝秘話】試合中の涙に“賛否両論” スピードスター周東佑京が号泣した理由は?
posted2020/10/28 11:02
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
周東佑京が泣いていた。
9月12日の福岡PayPayドーム。試合終盤の8回、ホークスの守備が終わると、セカンドを守っていた周東は一塁側ダグアウトに走って戻った。2列あるベンチのうち前列中央あたりの自分の居場所にすっと腰を下ろす。すると、すぐに顔を突っ伏してしまい、大きなタオルを広げて目元を覆った。
少し時間が経って、我に返って背筋を伸ばす。瞳は真っ赤に染まっていた。涙を浮かべるなんてものではない。誰が見ても分かるほど号泣する姿がテレビ中継映像に大映しになった。
「2つのエラー」周東が号泣した理由
8回の守備機会で、この日2つ目となるエラーをしていた。
場面は1死一塁。ここで打席のメヒアが放ったのはセカンドほぼ正面の緩いゴロだった。
少し前進して大事に捕球しゲッツーを狙う。しかし、ボールが右手の指先に引っ掛かりすぎたのか、送球は二塁ベース上ではなくショートの守備位置方向に逸れてしまい、そのままレフトファウルゾーンまで大きく転がっていった。痛恨の悪送球で1死二、三塁となり、次打者の犠飛でホークスは失点を喫した。
一塁走者は大ベテランの栗山巧だし、打者走者はメヒアだ。慌てる必要は決してなく、凡ミスと言われても仕方のないプレーだった。
この試合、1つ目のエラーは7回にあった。この回先頭の呉念庭の打球はバットを折られたこともあり、ボテボテの詰まったゴロだった。周東は猛然と前進し軽快にさばいて一塁へ送球。だが、一塁手のミットが届かないほど本塁方向へ少し流れてしまった。
また、この回は記録に残らない拙いプレーがもう1つあった。1死一塁からの三塁ゴロ。松田宣浩が「5-4-3」で併殺を狙いに行ったが、周東との連係が合わずに二塁ベース上でもたついた。チェンジにできず走者が残ってしまい、ここで先発の武田翔太はイニング途中の降板となってしまった。
試合自体はホークスが3回までに7点もリードしていたので、周東のミスが勝敗に直結することはなかった。しかし、周東本人は度重なる失態がただただ悔しかった。そして申し訳なかった。頭の中はぐちゃぐちゃだ。唇を震わせて泣いた。あふれる涙を我慢することができなかった。
「他の誰より、僕が一番じゃないですか(笑)」
それにしても、人生は山あり谷ありだ。
たった1日前、周東は誇らしげに笑っていた。