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ドラフト前夜は眠れなかった…楽天・黒川史陽がプロになれたワケは“努力し続ける”才能
posted2020/10/24 17:01
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
「奇跡ですね」
東北楽天のルーキー・黒川史陽(ふみや)の父、洋行さんは、興奮冷めやらぬ様子だった。
奈良県出身の黒川にとって、関西での初の凱旋試合となった京セラドーム大阪での10月2日のオリックス戦。黒川は7番・セカンドで先発出場すると、7回表の打席でオリックスの開幕投手・山岡泰輔からライト前に安打を放った。
「一軍でこんな……奇跡です。もう十分です」と洋行さんは満面の笑顔だった。
母の枝里子さんは、「本当によかったです。1年前の今頃のことを考えると……」と感慨深げだった。
家族会議では大学進学を勧めたが
1年前、智弁和歌山高校3年だった黒川とその家族は、ドラフト会議を前に気をもむ毎日だった。
昨年3月の家族会議では、洋行さんは黒川に大学進学を勧めた。
「人生安全に、ということを考えたら、やっぱり大学を出ているほうが、人脈だとかいろんなことを含めて、いいのかなと。ドラフト1位で絶対かかるというのなら別でしょうけど、あの時点ではどうなるかわからないという感じだったので」
しかし黒川本人は、「絶対にプロに行きたい」という意志が堅かった。
「だから、『じゃあ勝負するか』と。あそこでこっちが大学に行けと押し切ったら、本人的には、中途半端な人生を送っちゃうんじゃないかなと思ったので」と洋行さんは言う。